長編小説

□第五話 敵か味方か
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「トシ、これから話をする。
みんなをここへ集めてくれ。」

「…分かった。」

いつもはふざけてばかりの近藤も、この時は真面目な顔をしていた。
それは同時に事の重大さも伝わってきた。

数分も経たない内に隊員たちが集まった。みなもこの状況下である程度理解していたからだ。

「いいか、一度しか言わないからよく聞け。今回の騒ぎは高杉が黒幕だ。
だが、夜兎も絡んでいるとにらんでいる。
これは命令だ。
夜兎を見かけたらすぐ確保だ。
…万事屋のチャイナ娘もだ。」

「ッ!!!近藤さん…それは…」

「本気ですかィ?」

土方のかわりに沖田が言葉を継いだ。
めずらしく近藤に突っかかっている沖田に場の空気がピリっとなる。

「もう一度言うぞ、総悟。
これは上からの命令だ。
…もう決まったことだ。」

「…分かりやした。」
「……。」

「他に言いたいことある奴はいるか。
いないなら以上だ。各自持ち場に戻れ。」

重い空気から逃げるかのように、隊員達は足早に去って行った。
残ったのは、近藤と土方、沖田だけだ。

「近藤さん、さっきの話は…。」

「あぁ、本当のことだ。
だが俺もトシと同じ気持ちだ。
チャイナ娘がそんなことするとは思わんし、関係がないと信じている。

だけど上からの命令だ。
俺達はそれに従うしかねェ。
それしか出来ん。
すまんなトシ、総悟。」

「いや、近藤さんのせいじゃねェよ。」
「そうですぜィ。
全部土方のせいでさァ。」
「ちげーよ!!
ったく。とにかく追ってみるしかねェだろ。見つけ次第確保だ。

…俺達は真選組だ。どんな奴でも私情をはさまねェ。
たとえ誰であっても、だ。
いくぞ、総悟。」
「へいへい。」

スッ―
パタン

「トシ、それがチャイナ娘であっても…お前は平気でいられるのか?
平気な顔で…始末、できるのか?」

土方の神楽への気持ちを知っているだけに、胸が痛んだ。
なぜ、好きな人を敵としなければいけないのか。
上の命令は絶対。理解していても、酷なものだと、呟いた言葉が自分の耳に響くだけだった。
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