長編小説

□第九話 みんなは1人のために…
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「ったくよー、俺に言ったってしょうがねェだろうが…。
アイツが勝手に出てったんだからよ。
俺は悪くねェよ。な、ババア。」

今日は店に客は俺1人だけだった。

「あんまし飲みすぎるんじゃないよ。
…しょうがない野郎だね。

今日はあたしが一杯付き合ってやるよ。」

そういうとババアはコップを1つ用意して酒を注ぎ始めた。

「あんたが、護ってきたもんは何だったんだい?」
「…はっ?」

ババアは一口酒を飲んだ。

「国か?この町か?
それとも、目の前の苦しんできた奴らかい?」
「お、俺は…」

「銀時、あんたが護ってきたもんは、
あんたの護りたいもんじゃなかったのかい?

だったら今あんたは何を護ってんのさ。
護れてないじゃないのかい?

本当に護りたいもん護れない奴がガタガタ言うんじゃないよ。」

「ッ!!!
…ババアの言う通りだな。
今も昔も護るもんは何一つ変わっちゃいねェ。」


その瞬間ヤケ酒は終わりだった。
ゴクッゴクッゴクッ―

「…ババア、世話んなったな。
ちょっくら行ってくんぜ。」

急いで支度をしに万事屋に向かおうとすると、

「銀時ィ。」

「ん?」

「てめェが背負ってきた荷物なんだ。
次は簡単に手放すんじゃないよ。」
「ッ!!おう。」

「そうそう、大食い娘にも伝えておいておくれ。
あんたのせいで全然米が減らないんだ。責任持って食べに来な、ってね。」

ババアは背中を向けていたが、どんな顔をしているのか声で分かった。
穏やかな声色だった。

「あぁ、絶対に伝えに行ってやるよ。」

俺は急いで万事屋に戻った。


「…世話のやける奴だよ、まったく。」
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