薔薇庭園

□音速コメットのスグル様よりフリーだったので強奪させていただいたですΣΣ
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『女の子は砂糖菓子で出来ている』







そう教えてくれたのは桃色の髪をした姫様だった。

正しくは、その姫様が持っていた本に書いてあったのを聞いただけだが。







女の子は砂糖菓子。

今まで考えもしなかったが、俺はその言葉に納得がいかない。







女が女に喩えるならまだいい。



だがこの説が男から女を砂糖菓子と称していたとしたら、その響きからして大方繊細でこわれやすく口に入れればほろほろと溶けてしまうようなイメージを抱いているのだろう。

実際の女性はそんなに儚くはないのに。





「ウッシッシッシ〜。ルーカーちゃーまー?」



「待ちな!こんの、エロ神子!!」



「お兄ちゃん。喧嘩はダメだって……いつも言ってるよね?」



「ちょっとロニ!データ採取させなさ〜い!!」



「秘技!死者の目覚めー!!」







………。







この船はいつも騒がしく、そして女性が強い。

特に偏見もないためこのままでもいいと思うが、もし本当に砂糖菓子ならばどうだろう。







まずエステルはマカロン。

色からしてそんなイメージだ。

メルディも似たような雰囲気で同じくマカロン。



同じようにほわほわしたキャラだが、コレットは真っ白いメレンゲ。

アンジュとミントはレアチーズ。

フィリアはスフレチーズケーキ。



だんだんと砂糖菓子から離れてスイーツの括りになるが思考は止まらない。



前線で戦うクロエ、コハクは重厚なザッハトルテか。

あのいつも騒がしいノーマなんかにはシトラスのゼリーが似合うだろう。







…似合う?



そこまで考えて、砂糖菓子というイメージは間違いではなかったのだろうと思い当たった。

ただし外見で判断し、こうあって欲しいという男の固定観念も存分に含まれている。

男は女よりも夢を見る生き物だから。



仮にこの比喩を本へ書き記したのが男だとしたら、この説はやはり見た目でしか考えなかった最たるものだろう。







ふと思いつく。

女を外見でイメージしたとしても、この世の全ての女が麗しいとは限らない。

女性に対して失礼だとは思ったが、男だって不細工はいる。

そして男にも美形はいる。

(そこは限りなくイーブンなのだ)



もし美人ではない女がいて、見目麗しい男がいたら、果たしてどちらを砂糖菓子に例えただろう。

今度は女性がその男を砂糖菓子にたとえたかもしれない。







結局はどっちも変わらないということか。

長々と思考の海に沈んでいたが、ようやく浮上できそうになったとき。



何かに衝突した。





「い、って!どこ見て歩いてんだよ!」





透き通った碧玉が視界に入る。

王位継承者でもあるお坊っちゃんなだけに、長い長い朱金の髪が上等な飴細工のように繊細な光を跳ね返す。





「おい!聞こえてんのかっ!?」





あいにくまだ思考の波間を漂っている俺は返事する余裕がない。

いつも通りお坊っちゃんが威勢よく食って掛かるつもりで俺との距離を詰めたその瞬間。







目の前の彼から、甘い香りが漂った。

















もし砂糖菓子に喩えるならば、コイツは何になるだろう。

男が男にそんなファンシーなことを思ったら薄ら寒いことは分かってはいる。

だが別に他人が自分の頭の中を覗くわけでもないし、考えていることを他人につらつらと喋るわけでもない。

誰に分かってもらおうとも思ってないし、今のこの感情を共感されてもかえって困る。



つまり何を言いたいかといえば、





「ぉわっ!?何して、」

「黙れよ」

「、っん、」





キスを、したくなったのだ。

俺が。ルークに。











甘い香り。

柔らかく熱い唇。

極上の味?

野郎の唇なんて味わったことはない。

なんでキスした?

理由はない。

強いて言うなら甘い香りがしたから。



それなのに、もっともっと、と身体がそれを欲する。







どんな味がする?

どんな感触がする?

舐める?

ついばむ?

食む?











…とける?







あぁ…、





「…とろけちまうな」











ふわふわケーキやフルーツタルト、つややかなムースに欲張りなパフェ。

あの色とりどりで見目も華やかなスイーツたちも、いまのコレには敵うまい。











「ごちそうさん」











その直後、我に返ったと同時に視界に躍った鉄拳に、抗う術などあるわけなかった。











end.
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