薔薇庭園

□音速コメットのスグル様よりフリーだったので強奪させていただいたですΣΣΣ
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「ユーリ」





背後から名前を呼ばれて振り向いた。



そこにいたのは暖かい朱色の髪をふわりと揺らし微笑む青年。





「なんだ、ルークか。どうした?」





口から出た声色は自分とは思えないくらい穏やかで優しい。

しかし相手がルークならば仕方がないと思ってしまう。





「ユーリ」

「だから、なんだよ」





再び呼ばれた名前に苦笑しながら返すもルークが自分の名をいとおしげに、噛みしめるように呼ぶことに頬に熱が集まる。







そんなに感情を込めて呼ばれたら、どうにかなってしまいそうだ――。







そんなユーリの気持ちにはお構いなしに、ルークは何度もユーリを呼ぶ。





「ユーリ」



「ユーリ」





「ユーリ」







「ユーリ…」

























目を開けるとオフホワイトの天井が広がる。



二、三回ほど目を瞬かせ、ユーリはここが自分の部屋だとやっと気付いた。





「…夢?」





ぽつりと呟いた言葉は部屋に霧散する。

しかし口に出した途端に一気に目が覚め、思わず布団を頭から被った。





「…っ!?」





思考は混乱の極みで、なんで、どうしてという単語がぐるぐると頭のなかで巡る。





なんで、どうして。





「なんで、ファブレの夢なんだよっ…、」











クラスメイトのルーク・ファブレとはほとんど会話をしたことがない。

いいトコの坊っちゃんだということは知っており、彼の双子の兄がフレンと同じく生徒会に所属しているのも知っている。



だが、それだけ。



俺の彼らに対する劣等感とも言える感情をフレンは言わずとも理解していたから彼らと俺を無理に会わせることはしなかった。



だから、それだけだ。







なのに何故あんな夢を見たのか。







相手は男。同性だ。

なのに自分に向けられたことのない笑みや、柔らかい声。

はにかむようなそれに、ただただ抱き寄せたくて夢で伸ばそうとした腕で自分の肩を掴む。





「くっそ…、」





夢での自分はファブレを腕のなかに閉じ込めたならどんな顔をして微笑むのだろうと思っていた。

拒絶されることを前提としないなど現実では有り得ないのに、夢ではあまりにも自然に彼の前に立っている。







匂い立つように甘美で愛しく、そして相手を乞うる恋しい気持ち。



いまだに身体の芯が痺れるような熱は、なぜ夢のなかだけで留まらなかったのだろう。



なぜ、気付かせたのだろう。



夢から覚めたあとも、ファブレが、ルークが欲しくてたまらない。





秒針の音に顔を上げれば、目が覚めてからだいぶ時間が経っている。

早く家を出ないと遅刻してしまう。

しかしそれはルークと顔を合わせる時間が近づいている印。





「…どうしろってんだよ…っ」











長いながい一日が、始まろうとしていた。

















end.
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