名探偵コナン短編集

□ある空港にて
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 ザワザワと混雑する国際空港の待合室の1つの椅子に金髪の男性が腰を下した。空いた隣の椅子に揺り籠が置かれる。籠の中には男性と同じ金髪の赤ん坊がいた。

「よいっしょっと・・・。何処に行こうかね・・・―――。ヨーロッパは行き飽きたし・・・アジアかな・・・」
 
 バサリと地図を開き、行く先を決めようとしている男性。赤ん坊は、考え込む男性の邪魔をしないように大人しくしている。時々、男性に見せる笑顔は天使だ。

「・・・・・」

 男性は行き先を決めたのか、地図を閉じ、鞄からレターセットとボールペンを取り出して、何やら書き始めた。その顔は少々深刻にペンを走らす。

 20分後、5つの封筒に、それぞれ宛名を書くと、その封筒を一回り大きめの封筒に入れて、鞄の上に置くと籠の中の赤ん坊を抱き上げる。

 彼は赤ん坊が入っていた籠の底に封筒にを入れた。赤ん坊は、父親に抱かれてうれしいのかキャッキャっと声を上げる。

「あーあ・・・だめだよ。これは父さんの大事な物だよ」

 赤ん坊は、男性が首にかけていたネックレスで遊び始める。男性は赤ん坊の手を止めさせようとするも、赤ん坊は離さない。

「・・・・・。フッ、君はこれが気にったのかい?」 

 父親の問いかけに、にこりと笑う赤ん坊。

「仕方ないね。じゃぁ、これを君にあげよう
。これを持ってたら母さんと兄さんに会えるよ。きっと・・・ね」

 男性は、一瞬困った顔をするも決心したようにネックレスを外し、赤ん坊の手に握らす。赤ん坊は父親を見つめたまま。

「これはサファイアとアメジストが入った指輪だよ。母さんも同じ物を持っている。この真珠は君の指輪だよ。母さんのには碧い石が付いてる」

 男性は、まだ言葉の分からない赤ん坊にネックレスに通した2つの指輪の事を話す。1つは結婚指輪らしく内側にイニシャルが刻まれ、もう1つの指輪はベビーリングといわれるもので真珠が付いている。母親が持っているベビーリングには碧い石が付いているらしい。

「さて、行こうか・・・」

 男性は、赤ん坊を籠に戻し荷物をまとめるとスーツケースと籠を持ってそこから立ち去った・・・。
 
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