名探偵コナン
□第5話
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安室と東がレジを終え、買い物袋を乗せたカートを車へと押していると、聞き覚えのある声が、2人の足を止めさせた。
安室の愛車RX-7の隣にトヨタ・クラウンのアスリートGリボーンピンクが留まっていた。その車からカートから買い物袋を乗せ換えようとしている真幸と千秋の声が聴こえたのだ。
「「あ・・・」」
安室と千秋の声が重なり、静寂が訪れた駐車場。真幸は後部座席に荷物を乗せていて安室達3人には気づいていない。
「真幸、そのまま乗っててね」
千秋は、後部座席にいる真幸に声をかけドアを閉めた。無論、窓に黒の目隠しシートが張られている為、車内からも外からも見えない状態だ。
安室は沈黙の中、居心地悪そうに千秋達と自分達のカートを返しに行って来ると言い、その場を離れた。千秋と東のみが残る。
「はい」
長い沈黙を破ったのは千秋。彼女は、鞄から白い封筒を取り出して東もとい真人に渡す。
「何だ、これ?」
「夏樹兄さんから」
「ん」
封筒をチラ見して、問えば従兄弟の夏樹兄からのもの。素早くポケットの中へ突っ込んだ。
「たまには、帰ってきたら?貴方の家でもあるのよ?」
「そのうちな」
真人は、まだ言いたそうな千秋と向き合った。彼女は冷めた目で真人を見て言うも、真人もまた、冷たく言い放つ。
「そのうちね・・・。私達も毎日帰れるわけでもないから、言えた義理でもないけど・・・。3か月よ。貴方が帰って来てないの。たとえ、成人した執事とボディガード、 同い年の従兄妹が居ようと彼らは赤の他人であるしかない。ましてや、従兄妹である私でもさえも、あの子にはっ!!」
「分かってるって。落ち着けよ」
冷たく言い放つ真人の言葉に声を荒げる千秋。車の中にいる真幸や他の人に聴こえていないか辺りを見渡す。
「なんで、そんなに冷静になれる訳?」
「だって、あいつもう中2だせ?頭いいし、物事だって順序立てて考えて、いつも俺達の斜め上をいく答え出してるじゃねぇか?そんなに心配しなくても・・・」
「中2って、まだ14歳よ。あの子、まだ子供なの・・・。大人である私達に気を遣って笑ってるの。久しぶりに帰ってきた時のあの子の顔、笑ってるけど兄である貴方の姿を探してるわ・・・。真珠さん逹だって、フランスとドイツ、姉の美幸ちゃんはアメリカでいない今、日本であの子が誰よりも頼れるのは、貴方しかない」
真人の態度に怒りが収まらない千秋。彼女の瞳は涙で潤んでいた。真人は彼女の表情に根負けし、渋々帰宅すること伝えた。
「帰るけど・・・でもさ、今立て込んでて・・・」
「今週末、帰ってきて」
「はぁっ!?今、聴いてたか?仕事が立て込んでるって言っただろ?」
「聴いてた。仕事と妹、どっちが大事?」
「真幸」
「即答するぐらいシスコンな癖に。じゃぁ、帰ってくるのね。帰らなかったら・・・」
「帰らなかったら?」
「一生、家にいれないわ」
「は?それは、困る・・・」
「ポアロで会えるのに?」
「千秋、不適な笑みを浮かべるな。こぇーよ。ポアロは、零の穴埋め。会う確率は低いに等しいんだけど」
「そうね。真幸も忙しそうだし・・・もう、会う事はないかもね」
「分かった。今週末、帰る」
「じゃぁ、伝えておくわ。またね?あ、降谷さんによろしく伝えておいて」
「あぁ」
千秋は、満足した顔で車に乗り込むと駐車場を後にした。真人は、無言で見送る。
「さて、僕達も帰りますかね。薫?」
「あぁ・・・って、カート返すのに時間かかりすぎ。絶対、聴いてただろ?」
「あ、バレましたか?」
クラウンが見えなくなった所で安室が隠れていた柱から出て来て車のロックを外す。笑いながら車に乗り込み、エンジンをかける。薫も助手席に座りシートベルトを掛けながら言葉を漏らす。
「バレたといえば、バレたかもな?」
「何をです?」
「俺達が公安だってこと」
「千秋さんは仕方ないでしょう?同じ職場なんですから」
「いや、真幸に」
「えっ!?」
安室のシートベルトにかける手がピタリと止まる。
「あいつ、勘だけは鋭いからさ。さっき、挨拶した時にバレた。 偽名使ってポアロで動いてるの・・・零、お前もな」
真幸に自分がバレた事とを伝える真人。あろう事が、公安だと職業も見抜かれ、安室も【降谷零】と本名がバレている。
彼女の観察力と見抜く頭の良さに少し恐怖を感じた・・・。
「・・・・・あのさ、真幸ちゃんって本当に中学生?」
「うん、そうだけど?」
「本当に真人の妹なんだよな?翔君達3人セットだと目の保養だと女性客殺到してる」
「マジ・・・?」
「マジ・・・」
最近良くポアロに顔出すようになった真幸。双子のどちらかと2人の時もあれば3人セットの時もあり、蘭や園子、世良達に可愛がれているのは承知の上で自身達目当てで来ていた女子学生や女性客は真幸達の仕草や佇まいで【ボアロに天使が来た】とネットで話題になり、彼ら見たさに客が殺到。今やポアロの売り上げに貢献している。
「「・・・・・」」
安室達は2人して無言になり、背筋に冷や汗を感じながら、ボアロへ戻る為スーバーを後にした。