名探偵コナン

□第17話
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2人で晩酌。誰も帰って来る予定はなく、気兼ねなく話せた。零は、少しずつ酔いが回ってくる。

そして、意を決して鞄の中から戸籍のコピーを真人に見せた。少し涙声になりながら、話し出した。もちろん、両親から貰った手紙も併せて・・・。

「なぁ、真人?」

「んー?」

「どう思う?父さんがいつ養子に出したのか分からない。妹は、まだ生後半年。やっと、僕の顔見て笑ってくれた時だった。あの顔が忘れられない・・・」

零は、泣き崩れた。真人は、彼の横で手紙と戸籍を見比べる。写真に写る幼子は、義妹。

零の父・透が空港で娘を預けた家族こそ、真人の母・真珠と真人だった。1ヶ月後アメリカで幸一が保護した時は、驚いた。その後、彼に同い年の息子・零が居ると知り、彼の息子について情報を集めた。

そして1年後、居場所が分かり日本へ帰国。高等科へ通いながら情報を集め、彼が警察学校へ入ると得た。

真人は、すぐさま透に会いにアメリカへ。事故に巻き込まれる1ヶ月。自分に零と真幸を頼むと頭を下げた姿が真人が見た彼の最期だった・・・。真幸3歳、真人18歳の時。

「逢いたい・・・。逢いたいよ。真幸・・・」

零は酔い潰れて、譫言のように呟く。ベッドに運ぶと風邪をひかないように布団を掛ける。

「零。もう少しだけ、待て。お前の今抱えてる組織が壊滅したら、会える。だから、今は・・・義兄の友人として接してくれ」

真人は、零の髪を優しく触ると立ち上がって部屋を出た。リビングに戻り、後片付けをする。

後片付けが済むと、真幸組フロアへ降りる真人。1つの部屋に入ると、電気を付けた。その部屋は4畳程の和室。そこには、仏壇が・・・。扉を開けると、零が持っていた降谷夫妻の遺影写真が現れる。

真人は、2つの遺影写真に手を合わせて目を閉じる。2人の息子である零の代わりに・・・。暫くして目を開くと、仏壇の扉を閉め、戸棚へ足を向ける。

戸棚の中から2つアルバムを取り出した。青と白のアルバム。青のアルバムには、真幸が3歳まで透と一緒に過ごした期間の写真が収められており、白のアルバムには、零の母・恵と真幸の写真が収められていた。真幸が4歳から6歳までの写真だ。

透の死後、恵は既に闘病生活を送っており、亡くなるまでの3年間、病室で親子の時間を過ごした。写真や手紙に描写がないのは、何故かは分からないが。真幸と過ごす恵の姿は、自分の弱い部分を見られると思ったのか?それとも、ただ単に真幸の存在を隠したいだけだったのか?はっきり分からない。最期は、真人の両親と真幸に見守られ静かに息を引き取ったと聴いた。

真人も警察学校に入ってから間もなくして、零に連れられて見舞いに来ていた。警察学校を卒業する頃には、寝たきり状態に。卒業しても警察官として忙しい日々を過ごす中で零の代わりに見舞いに行っていた。

零の潜入捜査が忙しくなる前に、彼と見舞いに行ったのが、彼女の最期の姿だった。彼女は、最期の最期まで零と真幸の事を心配していた。兄妹として過ごせる日が来ることを願って・・・。

真人は、アルバムを閉じて元の場所へ戻す。そして立ち上がって部屋を出ると鍵を掛けた。

「約束は守ってみせますよ。透さん、恵さん。必ず2人を青空の下で笑顔で逢わせます。でも、まだ偽りの兄妹をもう少しだけ続けさせて下さい」

そう呟くと、部屋に一礼し立ち去った・・・。
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