名探偵コナン

□第19話
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 翌日、真幸は安室へのクリスマスプレゼントを持ってボアロへ。開店前だった為、お客はいない。真幸は、プレゼントの入った紙袋を渡すと、カウンター席へ座る。そこから開店準備をする安室の姿を見つめた。

「真幸ちゃん。今日は早いね・・・。クリスマスプレゼント、午後からでも良かったのに」

『そのつもりだったんだけど・・・。今日の午後にドイツへ行くから』

 昨日、白馬邸でドイツにいる幸一と連絡をした。勿論、零と北海道で会い、素顔を晒したことも・・・。そして、明日帰国する予定を早め今日の午前中にしてくれた。幸一がこっちに着き次第、一緒にドイツへ行く手筈を執事のノアとスノーが整えてくれている。

「・・・。そっか、年末は幸一さん達と過ごすのかい?」

『えぇ・・・。それでね。もしかしたら暫く会えないかもしれないの』

「・・・どういう事だい?」

『パパが戻って来いって・・・』

「そっか・・・。寂しくなるなぁ」

『それで・・・』

 真幸の顔がだんだんと下がっていく。安室はカウンターの中から出て来て彼女の隣に座った。

「真幸ちゃん。君は本当に幸一さんの娘さんかい?」

『え?』

 安室の声に顔を上げた真幸。2人の瞳がぶつかる。

「真幸ちゃんは23日まで北海道でスキー合宿だったよね?」

『えぇ・・・そうよ』

「僕もスキーの講師を頼まれてね。行ってたんだ」

『偶然ですね・・・』

「うん、本当にね。・・・僕は、そこで出会ったんだ。僕と同じ金髪にアースブルーを持った女の子にね・・・。そうだなぁ・・・髪の長さは結ってたけど、下ろしたら真幸ちゃんぐらいかな。背格好も似てたよ」

『そうなんですか・・・』

「僕にはね、行方不明の妹がいて・・・歳は15歳下。この前、幸一さんから亡くなった父の遺品だと手紙と写真が入ってて、写真には父と3歳ぐらいの女の子が映ってた」

『へ、へぇ〜・・・』

「僕の妹、生きていれば君と同じ年なんだ。北海道で出会った女の子もそれくらいの年じゃないかな」

 淡々と話す安室に対し、真幸の返事は曖昧になっていく。バレないかヒヤヒヤだ。

「そうそう。真幸ちゃんには見せてなかったね」

 そう言うと首からネックレスを外し見せる。以前コナン達に見せた母の形見の指輪だ。真幸の手のひらへ乗せる。その行動がある男性と重なり、彼女の瞳が大きく見開く。

『っ!?(お父さんっ!!)』

 真幸の頭の中で、ある衛藤が流れ込む。空港で父のネックレスでを引っ張て遊ぶ赤ん坊の自分を。そして、父は微笑むとネックレスを外しまさにの手のひらへ乗せた。まさに今、安室がしたように・・・。

「ねぇ・・・もう一度聞くよ。君は誰の子だい?」

『・・・・・。(もう無理よ)私は——』

「君は―」

 安室の両手が真幸の肩を強くつかむ。逃げられないように。彼のアースブルーの瞳を見つめる真幸は決心したように瞳を閉じると間を置く。そして、口を開いた。安室も同じく開き2人の声が重なる。

「零君。タイムアウトだ。私の娘を返してもらうか」

 そこへドアベルが鳴り、上質なスーツを着た幸一が現れる。真幸は、ホッとして肩の力を抜く。零は、立ち上がり幸一と向き合った。

「真幸、おいで。準備が整った」

『はい』

 真幸は椅子から立ち上がると鞄を持ち、幸一の隣へ立つ。

「荷物は、これで最後だね?」

『はい。大丈夫です』

「では、行こう。零君、娘が世話になった」

 幸一は真幸が持っていた鞄をスノーへ預けると彼女の背中を押した。真幸は幸一に連れられ、外へ出る。そこには、BMWのセダンストレッチリムジン。スノーがドアを開ける。

 乗り込む前に2人は向き合う。幸一は真幸の顔へ手を添える。目隠しするように・・・。暫くすると、彼の手が離れた。離れると真幸の瞳の色はピンクゴールドからアースブルーへと変わっていた。

「っ!?あの色はっ!!・・・ま、き・・・」

 零は慌てて外へ出るが、リムジンのドアは2人が乗り込むと同時に閉まる。そして、スノーは助手席へ。そのまま、走り去った・・・。

「くっ!!逃がさな——」

 零は車のキーを掴むと駐車場へ向かおうと走り出そうとする。そこへ、誰かの手が彼の腕を掴んだ。振り向くとスーツ姿の真人。

「何処へ行くんだ。零」

「離せ。真人」

「追ったって、無駄だ」

「真人、頼むから行かせてくれっ!!妹が・・・真幸が・・・」

「今のお前では、逢えない」

「何・・・?」

「今、お前のすべきことは何だ?」

「・・・・・」

「黒の組織の壊滅が目的で動いているはずだ。そんなお前のへ返す訳にはいかない」

「っ!?」

「まずは、組織を壊滅へ。そして、安全の確認が取れたらお前の元へ返す。それが親父と真幸がお前に出した答えだ」

 真人の言葉に、その場へ崩れ落ちる零。彼の瞳からいくつもの涙が溢れ暫く止まらなかった・・・。
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