Dream
□嘘付きの日
1ページ/3ページ
好きだなんて、言えない。…でも大好きだから。
-嘘付きの日-
3月最終日の夜。
赤城には雪が舞っていた。積もることは無いと分かりながらも隣で運転する啓介さんの目は真剣そのもの。
「ったく、何もこんな日に走り込みする必要なねェと俺は思うぜ?」
「仕方ないじゃない、涼介さんが走って来た方が良いっていうんだからさ。」
口から洩れるのは此処には居ないお兄さんのことばかり。
「そりゃそうだけどよ…」
「あ、そう言えば藤原君、恋人さんにどんな嘘を吐こうか悩んでたなぁ。」
「藤原が?」
隣でまだ文句を呟く啓介さんの気をまぎらわす為に夕方、ガソリンスタンドで会ったもう一人のエースの話を振れば見事に乗ってくる。
…たまに思うんだけど、そんなに藤原君の事が気になるのかな?だなんて思ったのは秘密。口に出せばムキになって否定されるのが目に見えてるから、ね。
「ほら、明日ってエイプリルフールでしょ?だから嘘を考えるんだって。」
「下らねぇ…。」
「とか言いながら、涼介さんにどんな嘘を吐こうか考え始める啓介さんでしたっ。」
話の続きを話せばそんな事かとテンション低く呟く啓介さん。私はそれをからかう様に言葉を紡ぐが表情はあまり変わることはなかった。
「いや、アニキに嘘は通じねェから、んな事はしねーよ。」
「嗚呼…、確かに涼介さんに嘘は通用しなさそうだよね。」
「そう言う瑞希は誰かに嘘を付くのか?」
ぼそり呟かれる言葉に苦笑を浮かべながら頷いて見せれば、アクセルを緩めコーナーを曲がる啓介さんに問い掛けられる。