Dream

□忘却曲線
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忘れる。
忘れない為に、忘れた。


-忘却曲線-





「問題です。人は1日でどれ位のことを忘れてしまうのでしょうか?」


ノートパソコンに向かい何やら考え事をしている彼に問い掛けながら珈琲を差し出せば、お返しとばかりに明確な答えが返ってくる。


「1時間後に56%、1日経てば74%を忘却。…エビングハウスの忘却曲線について、レポートでも出されたのか?」

「そうなんです。まだ、よくは分からないんですけど、ね。」

「確か、記銘してから1日の間に急激な忘却は起こるが、その後の忘却は緩やかに起こると言うものだったな。」


ノートパソコンを閉じ、此方を向く涼介さんの口からは先程まで私が睨めっこしていた教本に載っている言葉が紡がれていった。


「辛うじて理解は出来ても実感がわかないんですよ。例えばどうして同じ記憶なのに憶えてる人とそうじゃない人がいるのか、とか。忘却の速度が緩やかになるのはどうしてか、とか。…うー、もう、頭がパンクしてしまいそうですっ。」

「ふっ…。実感がわかないのは、忘れているという実感すらも俺達が忘れているのかもしれないな?」

「あっ…、なるほど!さっすが涼介さん、凡人な私とは考えることが違いますね。」


そんな考えは思い付かなかったと首を振れば、涼介さんは口に珈琲を運びながら薄く笑みを浮かべる。
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