Dream
□豆腐屋の1日
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AM:5:30。
豆腐屋の朝は此処から始まる。
-豆腐屋の1日-
「溢すんじゃねェぞ?」
早朝の配達。
オヤジから今や恒例となった紙コップを受け取れば、いつもに増して多く入っている水に溜め息が零れた。
「…オヤジ、水多い気がするんだけど。」
「ん?気のせいだろ。ほれ、さっさと行ってこい。」
それだけ言えば煙草をくわえたまま家の中に入って行くオヤジの背中。
「ったく、運転すんのは俺なのに…。」
〜〜
AM:6:13。
「毎朝ご苦労様、次も宜しくね?」
「はい、有り難う御座います。次も宜しくお願いします。」
豆腐を納品し担当の人に頭を下げ車に乗り込む。
紙コップの中の水を見れば溢れた形跡はない。下りはもっとスピードを出しても平気だと確信すれば俺はアクセルを踏み込んだ。
〜〜
AM:6:26。
「ん…、車が停まってる…のか?」
ふと路肩に車の影が見え速度を緩めれば、人影が後輪辺りで動いていることに気が付く。パンクでもしたのだろうか、そんなことを考えながら86から降りて声を掛ける。
「どうかしたんですか?」
「どうもパンクしちゃったみたいで…。」
そう言いながらもスーツ姿の女性は慣れた手付きでスペアタイヤと交換していく。
「あの、何か手伝いましょうか?」
「大丈夫、もう少しで終わるから。…あ、でももし時間が平気なら車が来ないか見てて貰えないかな?さっき轢かれちゃいそうになっちゃって…。」
手伝わなくても平気そうな気はしたけど、一応問い掛けてみた。すると申し訳なさそな表情を此方を向いて、彼女はそう言った。
「分かりました。」
「有り難う。それじゃ、お願いね。」
言葉と共に頷いて見せれば彼女は笑みを浮かべながら礼を口にした。