Dream

□365日
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この坂で、
この道で、
この峠で、

待ってる。
貴方が、来なくても。



-365日-



雨の赤城。
夏だというのに夜の空気は冷たく、降り続く雨が体温を奪っていく。

身体が濡れることも気に止めず立ち尽くしていれば、ふと雨が遮られた。


「…来てたのか。」

「はい、いつ会えるか分かりませんから。」


振り返れば啓介さんがこちらに傘をかざしていた。


「今晩はたぶん…アイツ、来ないぜ?」

「そう、ですか。」


僅かに躊躇い紡がれる言葉に頷きながら、私はそれでもじっと峠を見詰める。


「…帰らねェのか?」

「もしかしたら来るかも知れませんから。」

「……………。」


―…雨の日は良く彼を見掛けますし。と、そう付け加え笑みを浮かべれば啓介さんの形の良い眉がくしゃりと歪んだ。


「風時、まさか知らないのか?ケンタは…。」

「知っていますよ。中村さんに彼女さんが出来たことなら、知っています。」

「それでもアイツを待つ、のか?」

「はい。」


即答する私に、啓介さんが息を飲むの音が聞こえた。

きっと、呆れられたんだろうな。…だなんて苦笑を浮かべれば、ふいに雨が頬に当たり、傘は目の前を横切り地面に落ちて行く。

…気が付けば私は、啓介さんに後ろから強く抱き締められていた。


「俺じゃ、駄目か?」

「啓介さん。…傘差さないと濡れちゃいますよ?」

「……瑞希。ケンタ、じゃなくて、俺を、見てくれないか?」


耳元で聞こえる途切れ途切れの言葉を受け流そうとするも、啓介さんはその言葉をもう一度重ね呟く。
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