Dream
□君の前では
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降るのは、雪。
心配だけが胸を過る。
どうか無事でいて、
―君の前では―
「池谷さん!」
夜間出入り口を走り抜ければ見慣れた姿を見付け、此処が病院だと言うことも忘れて私は声を張り上げてしまった。
「どうして、君が此処に…?」
「どうしてじゃないですよっ、拓海君が病院に池谷さんが居るって教えてくれて…。心配したんですよ?」
「すまない、瑞希ちゃん。よりによって約束の日に…。」
今晩は以前からドリフトを教えると約束していた日。そんな日に、と申し訳なさそうに謝る池谷さんの手首には包帯が幾重にも巻かれていた。
「いいんです。それより、怪我は大丈夫ですか?」
「あ、嗚呼。軽い打撲と手首をちょっとやっちまっただけだから。」
「…良かった。でも、どうして私が来るまで待っていてくれなかったんです?」
「そ、それは…。」
拓海君の話では私が来る前から雪道を走っていてスリップした、との事だった。
どうしてかと少し気になって問い掛ければ池谷さんは気まずそうに顔をしかめた。
「私の教え方では満足出来ませんでしたか…?」
「そうじゃない!瑞希ちゃんの教え方は分かりやすいし、俺も楽しみで…って何言ってんだ俺は…。」
池谷さんは私がポツリと呟いた言葉に慌てて否定の言葉を発していた。