いただきました

□「ばーか。そろそろ気づけ!」
1ページ/1ページ

「ムサシ、好き、大好き。」

「あたしも好きよ、コジロウ。」

「…!!」

「大事な大事な、仲間だものね!」


俺の一世一代の告白は、見事にスルーされてしまった。

俺は、頑張ったと思うよ。
だって顔は真っ赤だったし、心臓はバクバクしていたし、喉はカラカラだった。

なのに、この結果とは。

彼女はこんなにも鈍感だったのか。

誰でも良いから慰めて欲しい気持ちでいっぱいだったが、このままでは悲しすぎる。

どうにか気持ちだけでもわかっていただきたい。


この日から俺は、度々ムサシに思いを告げることになる。


ちょっとしたピンチにさらされている時だったり(ほら、映画でよくあるだろ。
死ぬ間際の告白とか)
夜、星がキレイな、雰囲気抜群の時だったり。

しかし毎回その告白は彼女のなかで、おかしな解釈に変わってしまって。

「星、キレイよね。あたしも大好きよ。」
なんて…。


俺、ちゃんと
ムサシ、好きだ。
って言ったのにな。



ああ、もうこの気持ち伝わらないのかな。

「俺の話、ちゃんと聞いてる?」

少しだけ、お酒を飲んでいて。
気持ちがゆらゆらしていた。
伝わらないのがもどかしいとか、なんだか面倒になってきていて。

「聞いてるわよ。」

ねえ、じゃあ、なんで。

いい加減、わかってほしいなあ。


「もう一回言うからな。ちゃんと聞けよ。
好きだ。ムサシ」

「最近多いわね、それ。しつこいわよ。コジロウがあたしたちを大事に思ってくれてるのはわかったから。」

「あたし たち ?」

「あたしと、ニャースと…」

「ばーか。そろそろ気付け!」

「ちょっと!ばかって!なに、よ…」


怒って振り向くムサシに、近すぎるというくらいに顔を近づける。

振り向いた先には目一杯俺の顔、驚いたムサシは眉をさげて、ぽかんと口を開けて。
分かりやすく困惑していた。

「コジロ…っ!!」

開いたままの口に口付ける。
さっと、触れるだけの。

「俺の言いたいこと、わかった?」

「え、と。え?好きって…そういう?」

「そう。俺はムサシのことが大好きなの、恋愛的な意味で。」


しばらく黙っていたムサシは、今度こそしっかり俺の気持ちに気づいたらしい。

彼女の顔はだんだん赤くなっていく。

「えーと。しばらく、考える、わ。」

「よろしく。」


気づいてもらえただけで今は充分。
大丈夫、振られたって俺は諦めないから。

 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ