小ネタ集
□八作目
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11月11日。
スーパーからほくほく顔で帰ってきたムサシとコジロウは、袋からあるお菓子を一箱取り出し、ソファーに仲良く座った。
どちらからともなく手を重ね、雰囲気は、まさにチョコのように甘い。
口に出さないながらも幸せに浸っていた彼は、このままのんびりできたらいいなぁと考えていた。
「……コジロウ」
「んー?」
しかし、彼女の願っていたことは違ったようで、コジロウはのんびりから掛け離れてしまうこととなった。
「ポッキーゲームしましょ!」
「ポッキーゲーム……!?
そのために買ってきたのか!」
「もっちろーん。
さぁさぁコジロウ。ポッキー沢山あるんだから!ね?」
「うー……」
コジロウとしては、彼女とそういうことが出来る関係にあるとはいえ、したくなかった。
実のところ、ムサシはどうなのか分からないが、彼はキスも何もしたことがなかったのだった。
だからこのポッキーゲームはとても重大で、彼がヘタレていることを踏まえると、心情は容易に想像できる。
したいけど、したいけど……、恥ずかしい。
コジロウは逃げ出したかった。
しかしムサシはもう開封しているし、逃げたら不機嫌になってしまうだろうし……。
大人しく、覚悟を決めるしかなかった。
……ふと、ある可能性に思い当たった。
だいぶ……いや、多少バカなムサシなら、ポッキーゲームのやり方や意味を勘違いしているかもしれないと。
コジロウは、期待してムサシに尋ねてみた。
「なぁ。ポッキーゲームのやり方って知ってるのか?」
「えぇ。両端をお互いが加えるんでしょ〜?知ってるわよそれくらい!」
「ぐっ……。
じゃ、じゃあ……最終的にどうなるか理解してて、やろうとしてるのか……?」
「最終的?
……最終的……!?」
袋を破こうとする手が止まった。
どうやら事態は、彼の思う方向にいこうとしているようだ。
情けないことを承知の上で内心ガッツポーズをするコジロウだったが、顔を赤くしたムサシは思わぬことを言った。