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□暖炉の火と。
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「んー…」
「眠い?」

ぼーっと暖炉の火を見ているユウの横顔は眠たげ。

「もう寝る?」
ふるふると首を振るとゆっくり口を開く。

「まだ終わんねーんだろ…?」
「そうだけど、時間かかるし」

大きな欠伸をするユウ。
「…終わるまで待ってる」
「そか、ありがと」

明日までにまとめないといけない資料があって、ユウに付き合ってもらっていた。
でも、午前1時30分をまわるとさすがにつらそうだ。

ほら、体が傾いてる。
「ユウ、」
「…………起きてる」
「そうじゃなくて、ちょっと寝た方がいいさ」

肩を抱き寄せて膝の上に頭を乗せる。
膝枕なんて本当は俺がされたいところだ。

「ん…」
頬を染めてそっぽを向くユウ。
めちゃくちゃ可愛い。

「終わったら起こせ」
「はいはい」

膝枕しながら集中なんて至難の技だけど。
しかもユウだし。

「やるか…」

†††††††††††††††

「ふぁ…」
「ユウ?」

「…ラビ、」
それまで大人しく眠っていたユウはいきなり起き上がると俺の首に腕をまわす。

「ちょっ…」
寝ぼけているらしい。
あと一行書けば終わるんだけど。

「…す、」
「ん?」

顔を近付けて何かを呟くユウ。

「キス、しろ」
「…へっ!?」

今、何て…?

「早くしろ…」
「え、あっ…はい」

目を閉じたユウの頬に手を添えて少し乱れた髪を退ける。
心拍数上昇中。

「「「あ、」」」
ドアから覗いたのは見慣れた顔触れ。
「あぐっ…」
ユウの拳が顎に直撃。

「テメェ、何しやがる!」
「いや、何ってユウがねだったんじゃ…」

「寝ぼけたこと言ってんじゃねぇ」
「ごふっ…」
今度は鳩尾に右ストレート。

寝ぼけてるのはそっちじゃないの?
出かけた言葉を飲み込んだのは慌てたユウが可愛かったから。

「暴力反対さ…」

アレンとリナリー、ジョニーが顔を縦に並べている。

「わ―…ラブシーン見ちゃいました」
「いや、何も見てねぇ」

「大人への階段を駆け上がっているのねー…」
「駆けてねぇし」

「冷やかしちゃダメだよっ!」
「舐めてんのかゴラ」

「5ギニーで黙っておきますよ」
「アレンが黒いさ…」

「はぁ…」
呆れるユウ。

「言い触らしたらどうなるか…わかってるよな?」
ユウはドスのきいた声で腰の六幻に手を掛けた。

「お、お邪魔しました〜」
アレン達はドアを閉めて出て行った。

「さっすがユウさん…」
「感心してんじゃねぇ」

「おわわ…っ!」
「早く」
さっきと同じ姿勢に戻ると苛立った声でそう言った。

「寝ぼけてたんじゃないんさ?」
「馬鹿にしてんのか」

目を閉じたユウの睫毛は長くて綺麗だし、頬はほんのり赤くて可愛い。

そっと唇を重ねると薄くて形が良いことがわかる。

「んっ…」
愛しくなって抱き寄せると声をあげた。
「ユウ、エロいさ」
「るせぇ」

ちゅ、と額にキスをするとユウは俺の首元に顔を埋めた。

感情のコントロールが出来ずに不安になる位、
任務に行く度にもう会えないんじゃないかと思う位、
好きで、好きで、たまらなくて。

「言い表せない位好きさ…」
「…ばぁか」

「ね、ユウは俺のことどのくらい好き?」
「テメェなんざ嫌いだ」

「言ってることと行動が伴ってないさよ?」
「、馬鹿ウサギ」

きっと、ユウの「馬鹿」は「好き」の裏返し。

「あー…今、俺すげぇ幸せ」
思わず呟く。
「ああ…」
いつもより優しい響きの声。

パチ、と暖炉の火が弾けた。
「儚い」ってこういうことなのかもしれない。
炎がゆらゆら揺れて、ぼやける。

「泣くな、バカ」
「うん…」

 

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