キセキ(プラス)
□01 転入!
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春の風が舞う、5月。
ここ帝光中の校門に一人佇む少女は、その校舎の大きさに驚いていた。
『・・・でかっ』
その少女が周囲の注目を集めているのは、べつに校門の中央だったからだとか、格段に美人だからだとかいうわけではない。
あきらかに、制服が違うのだから注目をあびるのは致し方ないだろう。
そんな事は分かっていたが、やはり居心地が悪いのでそそくさとその場をあとにした。
つもりだった。
ドンッ
『〜っつ・・・いたたた。あっ、すみませんでした』
「いえ、こちらこそ」
走ろうと思ったらいきなり誰かにぶつかり尻もちをついてしまったのだ。
たしかに誰もいないと思ったのに・・・。
しかし、ぶつかってしまったのだから仕方ない。
((・・・水色))
両者同じ事が頭をよぎった。
「・・大丈夫ですか?」
『あっ、は、はい』
「あーーーー!!!!」
ぶつかった男の子が手を差し伸べてくれたが、何故か目を背けられているのか疑問に思ったが、その好意は素直に受け取ろうと思った。
遠慮なく手を取らせてもらったら後ろから大きな声が聞こえたので思わず手を離してしまった。
その弾みで、再び尻もちをつく。
(いたた・・・今日ついてない)
ドンッ
「どうしたんですか?桃井さん」
「どうしたもこうしたもないよ!テツくん、おはよう!」
「落ち着いてください」
「愛しのテツくんが魔の手にかかるところだったんだもん仕方ないでしょ!」
目の前で繰り広げられる騒動に茫然として見つめる。
しばらくすると、その彼女がジト目でこちらを見ているのに気が付いた。
(今度はピンクだ・・・。あれ?魔の手にかかるって、もしかして私の事??)
テツくんと呼ばれた男子生徒は、女生徒に抱きつかれながらも気にしていないようだった。
「朝っぱらから、うっせーぞさつき」
「あっ、青峰くんがこんな時間に来るなんてめっずらしー」
「あぁ?俺だってたまにはなぁ」
「おはようございます青峰くん。早起きは三文の徳っていいますからね。たまには早起きして登校したらどうですか?」
「三文の得ねぇ・・・!」
「字が違います」
(青・・・しかも黒くて大きい人来た!!)
次々に現れるカラフルな頭の持ち主に茫然としていると、その後から来た青峰くんと呼ばれた生徒と目が合った。
と、思ったら青峰は視線を少し下にずらしてニヤリと笑った。
「確かにな。こりゃあ朝から得したぜ」
『??』
その笑みが意味する事が分からないので考えるように首を傾ける。
いち早くその笑みの意味を理解した黒子は、女生徒の手を掴んで立ちあがらせた。
「ダメですよ、青峰君。キミもそろそろ立ちあがったほうがいいですよ。その・・・」
『あ、ありがとうございます』
「次はもうちっと色気のある奴頼むぜ?」
『?』
「水色ちゃん(ニヤッ」
『?・・・・!!』
それだけ言うと、青峰くんはすぐにその場を離れて行った。
一瞬何の事なのか分からなかったが、次の瞬間すぐに理解し顔を真っ赤に染めスカートの裾を押さえたのだった。
『んなっ、なっ、何、あいつ!!』
「すみません。ああいう人なんです」
『それフォローになってないからね!?』
「気にしない気にしない!」
『気にしますよ!!』
「それより、あなたどうしてここにいるの??」
「そういえば・・・その制服はこの辺りで見た事ないですね。何かの偵察ですか?」
『・・・偵察?偵察するようなのがあるの??』
「違うの?」
『私は・・・転校生というか・・なんというか』
歯切れの悪い応え方に、今度は2人が首をかしげるのだった。