キセキ(プラス)

□04 制服とコンビニ
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青峰と分かれたあと、小日向は、無事生徒会室にたどりつくと遠慮がちに扉をノックした。


「どうぞ」


中から凛とした声が聞こえ、そっと扉を開けた。


『失礼します。あの、小日向ですけど・・・制服ができたって聞いて・・・』
「あぁ、小日向か」
『赤司くん?!なっ、何でここにいるの?』
「何でって・・・おかしなことを聞くんだな。俺は生徒会の一員だから、としか理由がないだろう?」
『あっ・・・そっか』
「制服だったな。今取ってくるから、そのへんに座っていてくれないか。・・・お茶か何か飲むかい?」
『いや、そんなお構いなく・・・』
「そうか?じゃあちょっと待っていてくれ」


そう言うと、赤司は生徒会室の奥に入って行った。
扉の隣に、小さな子窓がついていて赤司が段ボールから色々なものを取り出している様子が見られる。
小日向は何故か落ち着かず、そわそわと周囲を見回した。
静かな空間には、外や体育館で部活動をしている声が響いていた。
ふと、先ほどまで赤司が座っていた所で視線を止めるとまた書類があった。
昨日よりは量は少ないが、やはり書類は積まれていた。


「待たせたね。これなんだが・・・サイズを確認してくれ」
『ありがとう。えっと、サイズ?・・・多分大丈夫じゃないかなぁ?』
「心もとないな。合わなかった場合、また発注しなければいけないんだ・・・そうだ、ちょっと着てみてくれないか」
『えっ?いや、大丈夫だよ!少しぐらいサイズ合わなくても、気にしないし!(赤司くんが発注してくれたの?これ以上仕事増やすのもなんか悪いしなぁ)』
「!・・・ふふ。心配してくれるのは嬉しいけど、そのぐらい平気だよ。いいから、隣の部屋で着てきてごらん」
『う、うん・・・』


有無を言わさないような赤司の発言に、新しい制服を持って先ほど赤司が入っていった部屋に入る。
改めて見ると、自分は違う学校に来たのだと実感する。
今まで着ていた制服を脱ぎ、支給された制服をまじまじと見つめる。


何気なく外を見ると、誰かと目が合った。

その相手もその事に気が付くと、勢い良く視線を外しその場から駈け出して行った。
一瞬の出来事だったが、見間違うはずがない。
あの髪の色は、先日自分のお弁当をダメにしたやつだ。


「小日向?」
『あっ、えっ?な、何?!』
「いや、固まっているようだったから声をかけたんだ。大丈夫か?」
『う、うん。大丈夫だよ!今』


ガチャ


『へぁ?!』
「・・・なんだ、ちゃんと着れたんだね」
『いや、その・・・お陰さまで速攻着れました』


赤司は、さも当然と言うように扉をあけて、小日向をマジマジと見る。
赤司が扉を開けるよりもギリギリ早く制服に着替える事ができたことに、小日向はほっと胸をなで下ろした。
しかし安堵したのもつかの間、赤司がじっと見ている事に気が付いた小日向はどうすればいいのか戸惑ってしまう。


『えっと、その・・』
「似合っているよ。サイズも大丈夫そうだね」
『あ、ありがとう//』


慌てて着た事と、急いで着た為に乱れた髪の毛を赤司が撫でるように直した事で心拍数が幾分か跳ね上がる。
顔が整っている赤司が近づいてきただけではなく、自身に触れているのだから原因が後者の占める割合が高いのは仕方がない。


「顔が赤いが、何かあったのか?」
『え?!いや、だって!赤司くんが・・・』
「俺が何??」
『・・あの・・・その・・・』
「どうした?」
『・・・〜っ!』
「ふふっ」
『・・・えっと・・・あっ。この学校に髪が黄色い人って一人だよね??』


あいまいな顔ではぐらかそうとする赤司に、勝てないことを悟って睨んでみたがかわされてしまう。
なんとか違う話題を出そうと、さっき覗いた人物を特定するべく質問してみた。


「黄瀬亮太のことか?・・・髪が黄色いやつは一人しかいないはずだ。同学年だよ」
『黄瀬くんって言うのか・・・』


赤司は小日向が何を言おうとしているのか、観察しながら状況を整理していた。
ふと、窓の外を見ると第一体育館が見え、その扉は開いていて中の練習風景が見える。


「・・・はぁ。そういうことか」
『えっ?』
「今後、着替える時はカーテンを閉める事を推奨するよ」
『・・赤司くんってエスパー?』


とりあえず、制服はこのまま着ていくことにした。
今まで着ていた制服は、戻った時に着るので大きな紙袋に大事に入れた。
いつの間にか赤司がお茶を入れてくれていたので、初めに座っていた椅子に座り一緒に飲む事になった。


『お茶も淹れてもらっちゃったし、お礼に何かできないかな・・・?』
「お礼はすでに貰ったよ」
『はっ?』


小日向てきには、忙しい赤司が自分の為にお茶を淹れて僅かだが話をする時間を作ってくれたことにお礼をしたかった。
困ったように眉を下げる小日向に、何かひらめいたように提案をした。


「それでは、俺が見た書類にハンコを押していってもらおうかな」
『う、うん!ありがとう!』
「お礼を言うのはこちらなのだけれど・・・」
『そんな事ないよ!赤司くんは優しいんだね』
「・・・」


それから、黙々と書類に目を通し、確認が終わった書類を小日向に流してく赤司。
小日向も渡された書類に丁寧にハンコを押して行った。
静かな生徒会室には、部活動に勤しんでいる生徒の声が響くだけでとても穏やかな雰囲気が漂っていた。


「これで最後だ」
『そっかー。お疲れ様ー』
「俺はこの後、部活に行くが・・・小日向はどうするんだ?」
『んー・・・暗くなる前に家に帰ろうかな?』
「そうか。送ってやれなくてすまないな。気をつけて帰ってくれ」
『うん!またねー』


「またね、か・・・。変った子だな」




赤司は、穏やかな気持ちのまま体育館に向かった。
  
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