キセキ(プラス)

□10.メガネ
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ガバッ!!


勢い良く置き、隣に置いてあった目覚まし時計を見ると、その長針は丁度真上を記していた。


『やばい!!!』


布団を蹴り飛ばし、目指す先は洗面所。
手早く顔を洗いコンタクトをしようとするが、急いでいる為手が震えて上手く入らない。


『あ〜!!もうっ!!』


イライラして、余計に入らない。
こうしている間にも時間は刻一刻と進んでいるのだ。

『〜〜っ!!今日はもうこれでいっか!』

コンタクトを入れる事を諦め、パジャマを脱ぎ捨て、朝ご飯用にと用意しておいたパンを一口食べると、そのまま玄関を飛び出した。

『転校間もないのに遅刻とか有りえない!!!』

いつも通っている通学路には学生の姿がまばらで、いかに自分が遅れているのか感じる事ができた。
息が乱れるほど走り、校門を通った時に丁度予礼を告げるチャイムが鳴った。


『ハァハァハァ・・・』
「おはっよー。ギリギリセーフだったねー」
『ハァ・・ハァ・・・お、おはよう・・・』
「大丈夫ー?」


ギリギリで、教室に駆け込むと森山が迎えてくれた。

「ギリギリだな。おはようなのだよ」
『おっ・・おはよう・・・緑間くん・・・』


とりあえず、息を整えながら自分の席に着くと、緑間がメガネを上げながら挨拶をしてきたので、小日向も挨拶を返した。


『・・・目覚ましセットし忘れてたみたいで』
「あっちゃー。よくそれで起きれたね。私だったら、寝過ごす自信しかないよ」
「人事を尽していないからそうなるのだよ」
『・・・反省してます』
「今日はメガネなんだね」
『コンタクトが入らなくって。お揃いだね!』


緑間を見ながら微笑むと、緑間は何の事を言っているのか分からず呆気にとられ一瞬反応が遅れた。

「・・・それだとメガネをしているヤツ全員がお揃いになるのだよ」
『えへへ。そうだねー。みんなお揃いだ!』
「くだらんな」
『とにかく、間に合ってよかったー』


脱力してつくえにつっぷすと、森山は良かったねと告げ、自分の机に戻って行った。
そろそろ朝のSHRの為担任が来るころだ。


『はぁー・・・』
「・・・これでも飲むのだよ」
『?』
「少しは落ちつくのだよ」


緑間に差し出されたおしるこを見て、不思議そうに緑間を見ると照れているのか小日向から視線を反らし、黒板の方を見ていた。
朝食を満足に食べれらなかった小日向にとっては、お腹に溜まるであろうおしるこは正直ありがたかったので、素直に受け取る事にした。

『ありがとう!あとで飲ませてもらうね』
「・・・心して飲むのだよ」


朝は慌ただしかったが、その他は普段通りに進んで行った。
ちなみに、本日も体育があったが体操着を忘れてしまった小日向。
朝急いでいたので仕方ないといえばそうだろう。
例によって、桃井しか他クラスに友だちの居ない小日向はD組に向かった。
わざと忘れたのではないかと一回は疑った桃井だったが、すぐに貸してくれた。
本日は男女別で体育を行ったので、黄瀬と話す機会も得られずあっという間に放課後になってしまった。
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