キセキ(プラス)
□11.青峰とデート
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下校で賑わっていた昇降口は、今はもう人はまばらになってきていた。
青峰はさっさと靴を履き後ろを振り向くが、中々小日向が出てこない。
何やら下駄箱に顔を近づけては離し、少し移動して再び近づけては離しをくり返している。
「何してんだ」
『う、うん・・・』
「・・・ここだろ」
『!』
そう言うと、青峰が小日向の下駄箱から靴を取りだした。
自分の下駄箱の位置が分からず、焦っていた小日向は笑顔で受け取り、二人は学校を出ていった。
「マジで見えねえんだなー」
『・・・だからメガネ掛けてたんだけど』
「まぁ、そうだろうなー・・・!」
何気ない会話をしていると、いきなり小日向が大勢を崩したので青峰は反射的に手を伸ばして支える事になった。
どうやら、何かに躓いたらしい。
「おいおい・・・」
『あ、ありがとう・・・!私一回家に帰って、コンタクトしてきたらよくない?!』
「あー・・・お前ん家どっち?」
『校門出てあっち』
「正反対じゃねーか。めんどくせー」
青峰はダルそうに頭を搔くと、名案を思いついたように酒井の手を取り、自分の鞄を掴ませた。
「これでいいじゃねーか」
『えっ、でも・・・』
「さっさと行こうぜ」
結局、そのままメガネ屋まで行く事になった。
メガネ屋につくと、あまりの種類の多さに何を選べばいいのか分からず隣の青峰を見上げた。
青峰は中々来る事のないメガネ屋が珍しいのか、適当に取ったメガネをかけて楽しそうにしていた。
「あ?お前もテキトーに掛けて見ろよ。これとかいいんじゃねー」
『わっ、ちょっと?!』
「ぶあははははは!似合わねぇー!!」
『・・・(イラッ』
「次これなー・・・ぶははははっはははは!!」
『青峰くんは次これね!』
「って、痛てッ」
『ちょっと屈んでよー』
「嫌なこった。さっさと自分の選べよ(ニヤニヤ」
『人で散々遊んでたくせにー!』
そう言うと青峰は他のショーケースを見に行った。
納得はいかなかったが、とりあえずメガネを手に取りかけて見る。
鏡を見るが、やはりぼんやりしていて、どんな感じかは分からない。
鏡の前で、困っていると散々メガネで遊んで暇になったのか青峰が近寄ってきた。
「・・・こっちのほうがいいんじゃね?」
『えっ?・・・まーた変なのじゃないでしょーね』
「もうしねーよ。してもいーけどな」
『・・・』
ニヤニヤと笑っているのだろう、楽しそうな青峰の声に若干眉をひそめるが、とりあえず渡されたメガネを手に取り掛けて見る。
自分では見えないので、青峰に確認してみる。
『どう??』
「あー・・・変じゃねぇけど。やっぱ、こっち」
『・・・・』
青峰の真剣な声が意外に感じ、呆気に取られてしまった。
どうせ、自分では確認できないので青峰の意見を全面的に受け入れることにした。
「よし。これにしよーぜ」
『う、うん』
店員に話をつけている青峰の背中を見つめていると、自分の名前を呼ばれた。
どうやらこれから視力を測るらしい。
店員に促され、視力検査をする。
「じゃ、買ってくっからその辺にいろよ」
『はっ?えっ、いや、えっ?』
「そこにソファーあっから、座ってろって」
レジに並びながら、ソファーを指さす青峰だったが小日向は何を言っているのか今一良く分からなかった。
『わ、私買うよ?!』
「俺が壊したんだからいーんだよ」
『で、でも!』
「じゃねーと、テツも怖ぇしな・・・」
小日向が何か言っても、青峰は聞く耳を持たないかのようにさっさと会計を進めていた。
その間店員が微笑ましそうに見ているのを、小日向は知らない。
しかし、青峰はその店員の態度に気まずく、心の中で小さく舌打ちをした。