キセキ(プラス)

□11.5 部活中
1ページ/2ページ

ダンッ ダンッ 


まだ部活が始まるまで時間はあるのだが、先に来ていたメンバーは適当にボールを触って遊んでいるのだろう、体育館からはボールをつく音が聞こえていた。
緑間、黒子、紫原は部室で各々準備をしていた。


ガチャ


「黄瀬ちん、何?その変な帽子」
「ひどいッス!ファンの子から貰ったやつッスよ!そのまま捨てたら可哀そうじゃないッスかー」
「似合ってなさすぎー」
「黄瀬はそのお陰でチャンスを生かしきれなかったようだがな」
「なんの事なのだよ?」
「それが教えてくれないんッスよねー」


赤司は、意味深な笑みを浮かべたまま自分のロッカーに向かった。


「・・・黄瀬くんと来るなんて珍しいですね」
「たまたまだ」
「赤司っちも酷いッス!!」


赤司と黄瀬も手早く練習の準備を済ませ、全員で体育館に向かった。
先に来ていた生徒達は、キセキの登場にいくらか気を引き締め始めるのだった。


「黒子、青峰はどうしたのだよ?」
「一緒に来ないことのほうが珍しいよねー」
「あっ、青峰くんなら・・・メガネを壊したので買いに行っています」
「・・・青ちんメガネしてたっけ?」
「いえ。掃除をサボろうとして窓から出たら、メガネをかけていた人にぶつかって壊したんです」
「最悪なのだよ」
「うっわー、青峰っち残念っすね」
「赤司くん。そういうわけなので、今日は青峰くんは部活に遅れます」
「・・・わかった」


溜息と共に頷いた赤司は、顔を上げるとともに体育館にいるメンバーに向かい号令をかけた。
その声に、ダラダラしていたキセキ達も気を引き締め整列した。
全員がそろったところで、赤司により今日の練習メニューを告げられた。





そして・・・休憩時間。


「・・・」
「うわー!!黒子っち!!しっかりしてくださいっす!!」
「桃ちーん。黒ちんが死んでるー」
「テツくん!大丈夫?!」
「・・・いつもの事なのだよ」
「あれ?桃井っち、いい匂いがするッスね?」
「えっ?そう?なんだろう?」
「本当だー。(あれ?この匂いどっかで・・・?)」


桃井は、自分のジャージに鼻をつけて匂いを嗅ぐ。
特別普段と違うことはしていないつもりだったのだが・・・確かにいい匂いがした。


「・・・黄瀬、女子の匂いを嗅ぐのはあまり関心せんな」
「あっ、ご、ごめんっす!」
「べつにいいけど・・・それより、テツくん!よかったらこれ食べて!!」
「「「「「・・・・」」」」」


そう言って桃井が出してきたのはレモンの蜂蜜漬け。
ただの蜂蜜漬けではない。
これは帝光中バスケ部の七不思議にもなっている、丸ごとレモンの蜂蜜漬け。
いったいどうやって食べればいいのだろうか。
以前、桃井に好意を寄せていたバスケ部員がかぶりついたが・・・そのままトイレに直行したというブツだった。
今回も見た目は依然と変わりない。ただの丸ごとレモンの蜂蜜漬けだ。
それがさらに恐怖を倍増させる。


「桃井・・・それはどうしたのだよ?」
「テツくんの為に家から作ってきちゃった!」
「・・・一人で作ったのか?」
「当たり前だよー!」
「・・・ほらー、黒ちん。桃ちんが差しいれしてくれたよー。黒ちんに」
「・・・」


黒子は、先ほどとは違う嫌な汗を流しながらうつぶせになった顔を上げようとはしなかった。


「もうちょっと回復してからのほうがいいかな?きーちゃん、先に食べていいよ?」
「え゛?!えっと・・・俺、青峰っちにそろそろ来れないか連絡しないといけないんだったッス!」
「んー・・・じゃあ、赤司くん部長だし、先にどーぞ?」
「・・・俺はまだやることがあるから先に他のやつらにあげてくれ。できれば全部。そして、黄瀬。俺がすぐに来いと言ってると伝えてくれ」
「わ、分かったッス」


いつもは、青峰がストレートに批難するため被害は出ていないが本日は青峰は不在だ。
その後も、キセキのメンバーに食べさせようとする桃井を何とかかわしているうちに練習再開となった。
むしろ、練習よりも桃井の差し入れをかわす事のほうが体力を費やしたことは言うまでもない。
黄瀬を犠牲にすることで、やっと自体は収集したのだった。
そもそも、メールにそんなに時間はかからない。
黒子は紫原に引きずられるようにして、コートに入って行った。






「青峰とはまだ連絡がつかないのか」
「・・・ま、まだッス」
「きっとサボってるのだよ」
「・・・許せませんね」
「青ちんばっかずりーし」


折角の休憩時間に無駄な体力を費やしたキセキ・・・基、赤司の機嫌は激しく悪い。
全ての苛立ちは青峰に向かっていった。


「俺が直接連絡をしよう」
「お、お願いするッス・・・(青峰っち、ごめんッス。庇えないッス)」


その時の赤司の背後には般若が見えたとか見えないとか。


(青峰くん、ご愁傷さまです)(あーあー青ちん・・・)(自業自得なのだよ)



「・・・出ないな」
(((無理も/ないッス/ないです/よねー/のだよ)))
「まぁ、俺からの電話だということは見たはずだから、すぐに来るだろう。練習を再開するぞ」



赤司の発言通り、そのあとすぐに青峰が体育館に駆け込んできた。
青峰はいつもの練習メニューの5倍をこなすことになるのだった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ