IF〜

□第一章
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その日は、ひどく明るい十六夜で。


申し訳程度にかけた月は雲ひとつない夜空にあり、周囲の星々とあいまって、容赦なく夜道に影を映し出していた。

肌寒さを増していく夜風に私は、制服の上から羽織ってきたカーディガンの襟元を合わせた。

陽の光のもとでしか知らない校舎はさえざえとした月光を浴びて、闇の中青白くその姿を浮かび上がらせている。

ただそれだけで、ようやく見慣れてきた建物はまるで別のものであるかのように、私の前に立ちはだかっていた。

私は今から自分がやろうとしていることの無謀さにおののく心と、それでもやらなくてはならないという覚悟とを抱えながら、校舎を守るように張り巡らされたフェンスへと手を伸ばした。

 
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