●鬼子ちゃんと柱●

「・・・ただいま」
『義勇!おかえりー!』

任務を終えて産屋敷に報告に来た水柱こと富岡義勇はある一室に立ち寄った。
そこにいたのは、同じ柱である胡蝶忍と甘露寺密璃ともう一人・・・目が人間とは違う少女、鬼子だった。
突然訪れた富岡に即座に反応したのが、この鬼子。
嬉しそうに抱き着く姿は、もはや恒例になっていた。
勢いよく抱き着いてきた鬼子を受け止めた富岡は、鬼子の頭を一撫ですると懐から小さな包みを出してきた。

『なに、これ??』
「・・・金平糖」
『買ってきてくれたの?』
「鬼子、好きだろう」
『好きーー!!』

富岡の思いがけないお土産に嬉しくなり、さらに力強く抱きしめる鬼子。
これが夜だったら手加減なしの鬼子の抱擁によって富岡の骨は砕けているだろう。

「良かったねぇ鬼子ちゃん!」
「あらあら、富岡さん。私たちの分はないのですか?」
「・・・居るとは思わなかった」
「そんなんだから嫌われるんですよ。富岡さん」
「さっき、不死川さんもお土産を届けに来てくれたのよ!」

よく見ると三人が座っていたであろう場所には、お饅頭が置いてあった。
富岡が無言でそこに目を向けると、座りたいのかと思った鬼子が手を引いて誘導する。
そして、座った富岡の膝の間に鬼子が腰を下ろすと同時に、富岡が入ってきた方ではない襖があいた。

「・・・なんだぁ、お前も来てたのか富岡ぁ」
「不死川・・・俺のお茶は」
「ねぇよ!」
「不死川さん、お茶まで煎れていただいてありがとうございます」
「嬉しいわ!」
「ケッ、よく言うぜ。煎れてこさせる気満々だったくせによ」
『わーい!早く食べよう。義勇、お饅頭半分こしよ!』
「あぁ」
『しのぶちゃん、こっちのも美味しいよ!』
「それでは、私とも半分こしましょうか。こちらもどうぞ」
『ありがとう!しのぶちゃん大好き!!』
「えー、私も食べたいわ!」
『密璃ちゃんにはこれだけじゃ足りないもんね』
「あっちにまだあんぞ」
『そうなの!?さすが風柱!気が利くね』
「・・・おい」

眉間の皺を一層深くして、声を低くした不死川。
その様子に笑いをこらえるように体を震わせる胡蝶と甘露寺。
もくもくと饅頭を食べ、お茶が飲みたいと明後日なことを考えている富岡。

『なに?』
「俺の名前は不死川実弥だ!」
『知ってるよ?』
「・・・鬼子は柱の名前は憶えているぞ」
「てめぇは黙ってろ富岡ぁ!!」
『ビクッ』

大きな声に驚いた鬼子が、咄嗟に富岡にしがみつく。
その様子に面白くないのは不死川だ。
しかも原因が自分にあるのが分かっているので、さらにイライラしてくる。
感情の行き場がなくなった不死川は、怒って部屋を出て行った。

『また、義勇は風柱を怒らせてー』
「俺のせいか・・・」
「あとで謝りにいかないといけませんね、富岡さん」
「あらいけない。私もそろそろ任務に行かないといけないわ」

分かっているのかいないのか、おそらく後者である富岡と鬼子は見当違いの作戦を立て始めている。
軌道修正する気もなく、それを面白そうに煽っている胡蝶。
不死川の苦難はまだまだ続く。


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鬼子ちゃんが大好きな柱のみんな。
富岡さん大好き鬼子ちゃん。






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