school life
□第3話
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「あああ」
新羅先輩が慌てて玄関まで歩いてきた。
「佳奈ちゃん、俺がドア開けたらスッと出てね?厄介な客が来たから。」
「はい。」
一体誰なんだろう。新羅先輩を慌てさせるのは、私が知ってる人なら静雄先輩か臨也先輩のどっちかなんだよね。タイミングの悪さを考えると、臨也先輩かな。そんな事をぼんやり考えている内に先輩がドアを開けた。出なきゃ。
「お邪魔しました。」
横目でお客さんをチラッと見てみた。臨也先輩だ。予想当たったね。別に嬉しくないけど。そのまま歩いて行こうなんて思うだけ無駄なわけで。
「佳奈ちゃん、無視しないでよ。」
掴まった・・・。左腕をがしりと掴まれてしまった。ああ、帰れない。
「こんにちは。」
臨也先輩はなぜか体中に怪我をしていた。血祭り状態で所々ほつれた学ランが痛々しくて見ていられない。ああ、なんて可哀相な学ラン。
「その怪我、どうしたんですか?転んだんですか?」
「心配してくれるのはありがたいんだけど、転んだだけでこうなるんだったら俺はとっくに死んでるよ。シズちゃんにやられた。」
そういう事か。なら別に大したことじゃないね。このまま帰ろうかとも思ったけど、この学ランを放ってはおけない。
「その学ラン、直しましょうか?」
「え、いいの!?」
家庭科は得意。興味があるからね。
「手当てしている間に、着られる程度には直せると思います。」
先輩の顔が綻ぶ。見ているとキュンとしちゃいそうな笑顔だけど、私には既に免疫があるから『顔はいいのに』と思う他なかった。
「折原君、早くしてよ」
「はいはい。」
新羅先輩にせかされて渋々部屋に入る臨也先輩。私も続いて部屋に入った。
「裁縫道具借ります。」
「いいよー。」
「これ、宜しく。」
学ランの上着を差し出す臨也先輩の腕はしなやかで細くて白い。本当に、『外見はいいのに』と思う他なかった。