school life

□第10話
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「そういえば、さっきドタチンと一緒にいたのが見えたけど何してたの?」

ドタチンって門田先輩のことかな?なんだか可愛いあだ名。

「私が不良軍団に絡まれてたのを門田先輩が助けて下さったんです。」
「絡まれたの?怪我はなかった?」
「はい。」

ナンパされることにも絡まれることにも慣れてるからね。上手く撃退するのは得意。可愛げに欠けるのが残念だけど。臨也先輩がやけに冷静なのは気のせいだよね。

「なら良かった。絡んできたのってシズちゃん関連の?」
「はい。私を静雄先輩の彼女と勘違いしたみたいで。」
「ふぅん。」

急に顔を背けた先輩。鼻血は止まったみたい。

「いい迷惑だね。でも、シズちゃんと佳奈ちゃん、相合い傘してたくらいだもんねぇ。勘違いされてもしょうがないんじゃない?」
「そうですかね。…って、なんで知ってるんですか?」
「好きな子があんな珍獣と一緒にいたらこっちも気が気じゃないよ。」
「珍獣って…」

酷い言いようだ。キレなければ優しくて面倒見がよくて、昔から私にとってお兄ちゃんみたいな人なんだけどなぁ。キレたら珍獣っていうより猛獣…ゴジラだね。

「あんまりシズちゃんと関わらない方がいいんじゃない?襲われたらどうすんのさ。」
「私は、襲われた時の対策のために強くあろうと頑張ってるんですよ?何を今更言ってるんですか。」
「でも、シズちゃんには敵わないよ。俺もあんなのと殴り合いになって勝てる気がしないし。」

どういう事だろう?当たり前の事をいきなり言われても脅しにも何にもならない。

「佳奈ちゃんが、シズちゃんにキレられたら危ないじゃん。」
「私はキレられませんよ。」

幼馴染を嘗めてもらっちゃ困る。

「なんで言い切れるの?」
「私にとって静雄先輩は兄のような存在なんです。それは静雄先輩からしても同じですよ。」
「へぇ。なんか、悔しいな。」
「何がですか?」

先輩は立ち上がって月を見上げた。

「俺よりシズちゃんのほうがずっと佳奈ちゃんと仲良いみたいじゃん。」
「みたいじゃなくて、実際にそうですよ?」
「そんな、はっきり言うなよ。」

体調が良くなってきら、座っていたベンチからゆっくり立ち上がって臨也先輩の隣に立った。涼しい風が撫でるように流れる。

「臨也先輩と知り合ったのは中二のときなので、どんなに頑張っても幼馴染にはなれませんよ。」

空を見る。都会だから星はあまりよく見えないけど、雲っていなくて綺麗だと思った。

「そうだね。」

臨也先輩と目を合わせる。

「だから、臨也先輩と、これからもっと仲良くなりた…」

どーん。轟音が響いた。お祭りの定番、花火。心臓に響くような大きな音と振動で我に返った。危なかった…!ぼんやりしたまま余計なことを言わなくて済んだ。セーフ。内心焦りながら花火を見上げる。

「今の告白だよね?」

絶対言うと思った。

「花火ですよ、先輩。」
「うん、すごく綺麗だと思うよ。で、さっきの続けてよ」
「私何か言いました?」
「…。」

先輩は夜空の大輪を見上げて『空気読めよ』と呟いたあと無理矢理私を抱き寄せた。

「俺は佳奈が好き。付き合って。」
「な、何ですか急に!」
「駄目?」
「駄目も何も、私は先輩が好きとは一言も…」

さっき言いそうになったけどね。まだ私には本当に臨也先輩が好きなのかわからないから、あることないこと言うのは失礼だと思う。

「考えといてよ。じゃあ、花火見てからお祭り行こっか。」

私が何を考えたか分かったのか分かっていないのか、先輩は私を離すと手を握った。

「そ、そうですね。後でかき氷でも奢って下さい。」
「冷たい物食べて平気?」
「多分平気だと思いますよ。無理そうだったら私の分も食べちゃって下さい。」
「それ間接キ」
「わ、私が全部食べますよ!」

自分の顔が赤いのは心の中で花火のせいにして、しばらく空を眺めていた。
その後は二人で屋台の並びを歩いた。射的が上手な女の子がいると思ったら舞流ちゃんだったり、そのまま合流して臨也先輩が文句垂れ流し状態になったり、門田先輩がバイトしてたのがチョコバナナの屋台で臨也先輩と私が爆笑したり、と賑やかなお祭りだった。
何より楽しかったのは妹ちゃん達。二人のテンションの差についていけない。舞流ちゃんに胸を触られそうになった時はかなり焦った。でもそこは私の意地、ちゃんと避けてから舞流ちゃんをガッチリ捕獲した。九瑠璃ちゃんも侮れない。大人しそうに見えて実はチャンスを狙って常に目を光らせてる。臨也先輩もそうなのかな…?二人を足して二で割ったみたいな感じかな。って私は何を考察しているの!?
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