school life

□第12話
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10月31日といえば

「ええと…月末?ですよね。」
「ああ…佳奈ちゃんって大和撫子なんだね…。そうなんだね!」

11月にある文化祭の大道具の準備していると、フラフラと現れた臨也先輩に急に絡まれた。

「今のは…ほ、褒め言葉なんですか?」

私にしては珍しいことを聞いた。いつもだったら完璧にスルーする所だけど、前に新羅先輩から言われたことを思い出して少し勇気を出してみようと思った。

「ううん、日本らしくていいよって言ったんだよ。」
「…古めかしいってことですよね?一応言っておきますけど、音楽番組はちゃんと見てますから。」
「へー、意外だ」
「酷いですよ。さっさと自分の仕事に戻ったらどうですか?」

私のちっぽけな勇気って何なの。頑張ってみたのに結局可愛くないことを言ってしまった。臨也先輩は私の気持ちに気付いているのかいないのか。あ、と呟くと私の頬を親指で拭った。

「絵の具ついてたよ」
「…ありがとうございます」

先輩が図太くて助かった。

「カボチャのお化け見たことない?」
「あ、最近いろんな店に置いてありますね。何ですか?あれ。」
「本当に知らないんだ!?」

ぶはっと笑い出した先輩。前からずっと思っていたけど、本ッッ当に失礼な人だ。知らない物は知らないんだからしょうがないじゃん!

「笑ってないで教えて下さいよ。」
「あれはね、地獄にも天国にも逝けなくなってさ迷っている男の霊だよ。」

どういうことなの。

「え?何でそんな不謹慎な物を飾っているんですか?」
「商業に利用する為じゃないのかな。」

ますます意味が解らない。臨也先輩ってもしかして説明下手?

「どうやってですか?」
「さぁ?俺は知らないよ〜」

嘘をつくな、嘘を。見慣れたどや顔だけど腹が立つ。先輩はまたフラフラと何処かに行ってしまった。

「あ、ちょっと、何処に行くんですか!?教えて下さいってば!」
「俺とまだ一緒にいたいの?いいよ。仕事より佳奈ちゃんの方が優先に決まって」
「さっさと戻って下さい。他の親切な人に聞きますから。」

一緒に仕事をしている友達とか先輩とか、と言いながらさりげなく門田先輩の方をチラリと見ると何故か可哀相なものを見る目で私を眺めていた。あれ?私って実は物凄く常識はずれ??
「折原くーん、戻ってー」とサボりを呼ぶ声がしたのでシッシと臨也先輩を追い払う仕種をすると、先輩は「しょうがないなぁ俺がいないと駄目なんだからじゃあまたね佳奈ちゃん」とか何とか言って戻った。
とりあえず、早々と仕事を片付けて31日が何なのか優しい優しい門田先輩に聞かなくちゃ。…呆れられるだろうなぁ。


「鈴木って絵上手いんだな。」

門田先輩だ。仕事が終わって後片付けをしていたら、気軽に話しかけてくれた。

「ありがとうございます。絵は好きなんです。美術部ですし。」

大道具というのは演劇部が使う舞台の背景。ここで手を抜くと親友(演劇部所属で泣きまねが得意)に怒られる。

「でも、私なんてまだまだ下手ですよ。先輩方はもっと凄いです。」
「いや、鈴木も負けてないだろ。」
「そう言ってもらえると嬉しいです!是非文化祭の時は展示場に来て下さいね。」
「ああ、見に行く。」

門田先輩は何処かの誰かさんとは違って大人っぽい。ちゃっかり宣伝しちゃったけど、この様子だと本当に見に来てくれそう。

「あの…31日って何かあるんですか?」
「ああ、さっき話してたやつか。」

門田先輩はそう言ってクスリと笑ってから、何処かの誰かさんと違って丁寧に解りやすく教えてくれた。

「へぇ…そんな文化があるんですね。」
「一応何か用意しといた方がいいぞ。クラスによってはハロウィンだ何だっつって菓子たかる連中もいるからな。」

例えば私の親友みたいなお茶目(?)な人のことかな。私のクラスには沢山いそうだ。

「悪戯されちゃうんですよね。わかりました、わざわざありがとうございます!」
「まあ、大したことじゃないしな。礼を言われる程のことでもねぇよ。」

…大人だ!私の周りにはこんな人はいなかったから、余計大人っぽく見える。これで読書家だなんて、カッコよすぎ。じゃあ気をつけて帰れよ、とまたまた大人な気付いをされて、私は久々に頼れる先輩に出会えたと心の中でガッツポーズをした。
ハロウィンは明日だから、ちゃんと準備しなくちゃね。明日…?臨也先輩、もしかして私がハロウィン知らないの分かってて質問してきた?
その可能性は高いね。お菓子はちょっと多めに作っておこう。
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