school life
□第14話
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文化祭当日
「佳奈ちゃんはさ、人の絵は描かないの?」
「…最初に言うコメントがそれですか?」
臨也先輩と一緒に美術部の教室に来た。私は先輩方の素晴らしい絵を見ながら感動していたけど、どうも臨也先輩は人物画にばかり目がいっているようだ。私が何日もかけて描いた風景画を見ても、人間好きは変わらない。これは結構くやしいな。
「綺麗に描けてると思うよ。」
「えらそうですね。」
「で、人間は描かないの?」
「人間なんて描いてどうするんですか。」
「え?」
いけない、悔しくても八つ当たりはしちゃダメだ。
「あの…人間が悪い訳ではないですよ。色んな表情があって素敵だとは思います。」
「つまり、描かないんじゃなくて描けないんだ?」
「…描いたことがないってだけですよ。」
「ふーん。」
先輩は私の絵をじっと見ている。私自身を見られているみたいでかなり恥ずかしいけど、一生懸命時間をかけて描いたからちゃんと見てくれるのはすごく嬉しい。
「うん。佳奈ちゃんっぽい絵だね。」
「…コメンテーターみたいな事言うんですね。」
しかも意味がわからない。
「人間の絵も描いてみなよ。」
「嫌です」
「なんで?」「あ…ええと…」
説明し難い事情がある。臨也先輩は不思議そうな顔をしてから、ニコッと笑った。
「そうだ、俺を描いてよ。」
「似顔絵ですか?」
「うん。俺がモデルやる。佳奈ちゃんが初めて描く似顔絵は俺がいい。」
独占欲ですか?と聞くのは恥ずかしいのでやめておこう。臨也先輩なら描いてみたいなぁ。描けるかもしれない。
「はい。モデル、お願いします。」
「うん、任せて。じゃあ他行こっか」
先輩は色々な絵を見回して、結局投票用紙にはしっかり私の絵の番号を書いてくれた。隠してるつもりみたいですがバッチリ見えてます。わざとなんだろうな。慣れてくると可愛く見える。似顔絵か…。ちゃんと描かなくちゃ。
「どうしたの?」
先輩がキョトン顔で私を見た。
「なんでもないです。次に行きましょう!」
手を繋いでみたかったけど、ちゃんと告白してからにしようと思った。一般の人も受験生も生徒もいる廊下で、臨也先輩と二人。