school life

□第18話
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バレンタインデーが近づいてくると私の仕事はいつも増える。楽しいから喜んで引き受けてる仕事に、今年は少し気合いを入れている。

「佳奈!安く簡単に短時間でできるお菓子の作り方教えて!」

美桜が私の席に駆け付けた。

「手を抜いちゃダメでしょ。静雄先輩が可哀相」
「やだなぁ、要するに愛だよ」

うわぁ、素で恥ずかしいこと言ってるよ。こっちが赤面しちゃう。仕事っていうのは、みんなにお菓子の作り方を教えること。中学の時から毎年誰かしらに頼まれるんだけど、なんと高校に上がってから急に依頼人が増えて、先輩後輩関係なしに、しかも先生からも依頼を受けて、家庭科の先生と一緒に家庭科室で授業(?)をすることになった。私ができることなんて料理と裁縫くらいだから役に立てるのはすごく嬉しい。
気合いを入れてるのはもちろん臨也先輩に美味しいチョコをあげたいから。愛だなんだって言うけど、味が悪かったら普通に恥ずかしいし。でもそれだけじゃなくて、臨也先輩は毎年下駄箱でチョコの雪崩みたいな騒ぎになり、机にはチョコが山積みになり、朝から放課後までチョコをもらいっぱなしで移動教室で苦労して、静雄先輩との喧嘩中でさえ声を掛けられる…って状況だから私のチョコが他の人のに負けてたら悔しい。
臨也先輩が本命チョコをたくさんもらってるのは毎年のことだからよく分かるし、先輩はもらえて当然だとも思う。そうなるとヤキモチを通りこして尊敬だよね。殺し合いみたいな喧嘩をしている先輩に話掛けることができる世の中の女性も尊敬する。私もチョコ屋が儲かるためのイベントって認識を改めて、尊敬するみなさんが喜んでくれるような楽しいイベントを盛り上げられたらいいなーと。なんだか他人事みたいだけど本気。

「明日の放課後、家庭科室ね。」
「よっしゃー!佳奈に教われば無敵!」
「そんなことないよ。要するに愛なんでしょ?」
「うわぁお、佳奈が恥ずかしいこと言ってる!」
「自分が言ったんじゃん」

相変わらずツッコミ所満載な親友だ。ま、静雄先輩とはお似合いだからいいか。

「佳奈は今年は折原先輩に本命チョコあげるんだよね?」
「う、うん」
「ちぇー。あたしがもらえる物だと思ってたのに。まあいいや、事前に言っておくけどあたしの本命は佳奈で、その次が静雄先輩だよ?期待してて」
「また変なことを…静雄先輩が可哀相だよ」
「佳奈と幼なじみとか静雄先輩マジ羨ましいわー。岸谷先輩もだっけ?あっちは変態だからいいや」
「事実だけど失礼だよ」
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