school life

□第19話
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3月になった。
いろいろなことがあったこの一年間を思い出してしんみりしながら三年生の先輩の卒業を祝うこの時期は何回経験しても馴れない。気が早いけど、来年臨也先輩が卒業するときは寂しくて泣くかもしれない。そしたらきっと、何泣いてんの?って笑われる。
私が悩んでいるときに相談にのってくれた美術部の元部長が今年卒業するから、三送会は張り切って用意しなきゃね。
私はここ数日の派手な嫌がらせで左足を負傷中。軽い捻挫だとお医者さんが言ってたからすぐ治る。臨也先輩は『大丈夫?』と手を繋いでくれるけど、原因は先輩なんですよ?

「もうすぐ卒業式ですね〜」
「佳奈ちゃんはその前の学年末で苦労してるんじゃない?」
「なんでその話題にするんですか!せっかく避けてたのに!」
「いいじゃん、最近勉強真面目にやってるんでしょ?」
「授業中に寝なくなっただけです。でも、大分分かるようになりましたよ!英単語もちゃんと覚えてます。」
「へーぇ。どれくらい覚えたの?」
「中学2年まで覚えました」
「全然ダメじゃん!中学校で何やってたのさ!?いやそれより、なんで高校受かったの?」
「…まぐれです」

臨也先輩との帰り道。いつも通りいじられてる。これが来年の春になくなるのかと思うと今からしんみりしてくる。ああ、来年は先輩は大学受験があるんだ。私と一緒に帰れることはもう少ないのか。

「臨也先輩がレベル高い大学受かっちゃったら私が追いつけないじゃないですか。だから今から頑張ってます。私は勉強できないんで、美術系の大学も考えてますけどね。留学とか」
「ふーん。留学ね…。俺は来良行くけど?」
「え!?まさか!だって、…え!?」
「…なんでそんなに驚くの?」
「勿体ないですよ!臨也先輩は頭がいいんですよ!?もっといい大学行けますって!」
「褒めてくれるのは嬉しいけど、いい大学行って何するの?」
「勉強を。」
「何のために?」
「就職で有利になるために。」
「俺、就職したくないし」
「…職人にでもなるんですか?ニート?」

そんな人とは結婚できない。…と自然に考えてしまい、何で結婚なんて言葉が出てきたのかと恥ずかしくなった。私は臨也先輩と結婚なんて、そんなこと微塵も考えてない!…別れることも考えてないけどね。

「なんで赤くなってんの?」
「…まぐれです。」
「可愛い」

頬をぷにぷにつつかれた。こういう時、肌の手入れをしていて良かったと思う。先輩の方がずっと綺麗なのはこの際気にしないことにしよう。

「からかわないで下さいよ」「臨也ぁぁぁッ!!」

なんでかな、後ろから鬼のような形相でかけてくる幼なじみのお兄ちゃんの幻覚が見える。怒鳴り声の幻聴まで聞こえる。他校の女子軍団に殴られた時、頭は庇ったはずなんだけど。

「げ、シズちゃんだ。佳奈ちゃん、逃げよう…ってその足じゃ無理か。」
「そうですね。ではここから別行動で。また明日」
「うん、明日は日曜だけどね。デートしよう」
「げ」

曜日間違えた!昔は間違えなかったのに!
と、どうやら幻覚ではなかったらしく静雄先輩が私の真横を駆け抜けた。疾風が吹き抜けていくのを感じる。でも臨也先輩は逃げ足が速いから、すでに背中が小さくなっている。どうせすぐに追いつかれて喧嘩になるだろうし、たまには私も追いかけてみていいかな、とゆっくり歩くことにした。
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