school life

□第1話
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臨也先輩が私の両肩に手を置いて、ぐっと顔を近づけてきた。反射的に目を閉じた瞬間に私の唇に何かが触れた。
何かと思って目を開けると、臨也先輩が私を抱き締め…、いや、私に抱きついていて、後ろで新羅先輩と静雄先輩がぽかんとしていた。

「これでナイフの件はチャラにしてあげるよ。俺、佳奈ちゃんが好きになった。」

ぱちりとウインクをしてみせる先輩。
分かった。私、1stキスを奪われて、満開の桜の下で愛の告白をされたんだ!

「折原君って、積極的なんだね。」

新羅先輩の一言と同時に時間が動き始めた。

「臨也ぁ!!佳奈にちょっかい出すなって言ったろうがぁぁぁ!!!」

私の横、つまり一瞬前まで臨也先輩が立っていたところに自転車が投げ飛ばされた。誰のだろう?私、チャリ通じゃなくて良かった。
自転車は車道を横切り、反対側の歩道に墜落した。おお怖い。
静雄先輩はあとで弁償することを考えてるのかな。んなわけないか。
あの自転車の持ち主、どうやって帰るんだろう、とぼんやり考えていたら、臨也先輩の声が遠くから聞こえた。

「ごめ〜ん、今日は一緒に帰れないや。また明日!」
「さようなら。」

ずいぶんと遠くまで逃げたものだ。っていうか、足速っ!この一瞬でよくこんなに逃げられるな。私も逃げ足は速いほうだけど、さすがにあんなに速くないよ。あれ、全然自慢にならない。

「待ちやがれぇ!」

静雄先輩が全力疾走で追いかけて行く。風が吹きぬけたよ、今。二人とも元気だなぁ。
なんか私ばばくさい・・・。

「先に帰ってようか」

新羅先輩がぼけっとしていた私に声をかけてくれた。

「先輩、臨也先輩の中二病、いつになったら治るんでしょうか?」
「永久に治らないと思うよ。それより佳奈ちゃん、僕の家に来ない?セルティが会いたいって言ってたよ。」
「私も会いたいです!今度お邪魔させてください」

新羅先輩は面倒見が良くて、好き。セルティさんに良く思われたいからそうしているんだけどね。そこまで誰かを好きになれるなんて羨ましい。私も誰かを好きになってみたいな。静雄先輩も、誰かをまた好きになれればいいのに。

「あ、告白されたのって、返事した方がいいんでしょうか?」
「放っておけば?なんて返事する気なの?」
「ノーコメントで。」

別に臨也先輩のことは嫌いじゃないけど、あの告白は私が特別だって訳じゃないからスルーしていいんだよね。
キスはどうなんだろう。先輩って、もういろんな人とキスしてるのかな。『人ラブ』って言って。イタいイタい。
キスと告白を同時にされてこんなに冷静なのって、異常だよね。『異常』に慣れちゃったのかな。
他の人に可愛くないって思われたらどうしよう。いや、さすがに他の人にキスされたら赤くなるか。
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