school life
□第3話
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私は今、手当ての済んだ臨也先輩に引きずられるようにして新羅先輩の家を出て、二人で歩いている。
私は小5のときに引っ越して中2のときに戻ってきたから、前仲が良かった新羅先輩と話すことは多かったし、新羅先輩とよく一緒にいた臨也先輩とも話す機会は多かった。クラスメイトは臨也先輩がかっこいいなんて言ってきゃーきゃー騒いでるけど、私にとってはただの胡散臭い先輩。まあ、見た目がかっこいいのは認めるけど。
静雄先輩も見た目はかっこいいと思う・・・というか、久しぶりに会って前よりとってもかっこよくなっててびっくりした。でも、他の友達はみんな怖いって言って近寄らないんだよね。みんな静雄先輩がどんな人か知らないから、怖がるのも当たり前か。本当は優しいのに、すぐキレるからなぁ。カッコよくなっただけじゃなくて、前より沸点が低くなってる気もする。
さて、私はなんで臨也先輩に告白されたんだろう。ドッキリ告白事件からもう一週間近く経つけど、未だに謎が解けない。本人は『面白くて可愛いから』の一点張りだし。そんな女の子はどこにでもいるし、それに私自身はそんなに面白い子じゃないと思う。バカにされてるのかな。バカだから。
ふと先輩の方を見る。先輩は私より少し前でブロック塀の上を歩いている。両手を広げてバランスをとってる姿がなんだか子供みたいで可愛い。高い所が好きなのは前から知ってたけど、落ちないかとヒヤヒヤするからやめて欲しい。猫は落ちながらバランスを整えるらしいけど、先輩は猫じゃないし。似てるけどね。
「先ぱーい。そんな所歩いてたら落ちますよ?」
「え、大学?」
「いいえ。そちらは心配ないと思いますよ。」
「へえ。ありがとう。」
先輩はブロック一段分でも他の人より高い所に行きたがるからね。今更何か言っても無駄みたい。
不意に先輩が立ち止まって私を見下ろした。私も後ろで反射的に立ち止まる。
「もしかして、俺が一人で歩いてたから寂しくなっちゃった?」
「いいえ。」
即答した。なんでそういう考えになるんだろう。私が何も言わないで考えていると、先輩がにっと笑った。
「俺が落ちるんじゃないかって心配してたんでしょ?」
残念、惜しい。
「せっかく直した学ランに傷がつくのを心配していました。」
「・・・俺が怪我するのはどうでもいいんだね。」
それはない。血がつくのはいやだ。染み抜きなんて面倒なことはしたくないし。ああ、そもそも私はクリーニング係じゃないから放っておいていいのか。
「ねえ、今凄く酷いこと考えてない?」
「別に。早く帰りましょう。」
スタスタと歩き出す私の後ろをスタスタと歩く先輩。家はどんどん近付く。素っ気無くしすぎたかな。先輩はドMだからあんまり関わるともっと好かれちゃうか。
別に、嫌じゃないけど。
「じゃ、また明日ね。」
「また月曜に。」
「ちぇ、デートの約束押し付けるの、失敗したな。引っかかると思ったのに」
自分の笑顔がだんだん引きつっていった。
「バカにしないでくださいよ。」
「シズちゃんよりマシだよ。ばいば〜い。」
先輩は、頭がいい人にバカって言われて何も言い返せなくなった人の気持ちを考えるべきだよね。あと、静雄先輩よりマシって言われても慰めになってない。