school life

□第8話
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私と新羅先輩はその後すぐに出かけた。こんな時は勢いで買っちゃうほうがいい。
池袋ってだけあってオシャレなお店がたくさんある。とりあえず、と入った割と庶民的なお店の浴衣売り場まで行くと、これまたいろんな種類の物がおいてあった。

「予算は?」

いきなりそれか。普通は『どんな色?』とか『どんな雰囲気のがいい?』とかから聞くと思うんだけどな。

「バイトしたんで、それなりにはありますよ。」
「そっか。まあ浴衣だし、そんなに高いのはないよね〜。」

先輩がそんなことを呟きながら見ているのは、黒や紺の大人っぽい浴衣。って、もしかして…

「浴衣って、セルティに似合いそうだと思わない?」

やっぱり。私が着る物は選んでくれそうにないな。でも確かに似合いそう。セルティさんの浴衣姿を私も見たい。色違いがあればお揃いがいいな。

「これ!!」
「ひッ」

じっくりと自分に合いそうな浴衣を探しているときに新羅先輩が急に大声をだしたから、びっくりして転びそうになった。

「佳奈ちゃん!見て見て!これどう?」

見て見てって…。小学生みたい。ノリでだけどついて来てもらった訳だし、無視するのはマズいか。

「なんですか?」
「こっちがセルティので、これが佳奈ちゃんの。」

一応私のも選んでくれたんだ!?感謝と驚きが混じった表情になって浴衣を見る。

「可愛いですね…!」

セルティさんのは紺色がベースで、所々にピンク色の花のイラストがある。
私のも紺色だけど、花の色が黄色。

「色違いだけど、どう?」

私は何も言ってないのに新羅先輩はお揃いの物を探してくれた。幼馴染ってだけあるな。腐れ縁?

「素敵だと思います!よく見つけましたね」
「私のセルティへの愛を嘗めてもらっちゃ困るよ。これ、喜ぶかな?」

セルティさんが浴衣を着る機会はあまりないと思うけど、家でくつろぐ時にはいいかもしれない。着て!って迫る新羅先輩のキラッキラな目が思い浮かぶ。ついでに私も、着てくださいっ!ってお願いしなきゃ。

「絶対喜んでくれますよ!黄色の方試着して来ますね。」
「うん。佳奈ちゃんも気に入ってくれて嬉しいよ。」

早くもセルティさんの浴衣姿を想像して目をとろんとさせている先輩に若干引きつつ、選んでもらった浴衣を着てみることにした。


確か帯って、前で結んで後ろに回すんだよね。あまり着たことがないから不格好になっていないか少し心配。

「先輩、どうですか?」

試着室のカーテンをそろそろと開けると、我に帰った先輩がハッとこっちを見た。ずっと妄想してたの?正直気持ち悪い。

「可愛いよ。似合ってる。」
「…えっ!?本当ですか?」

新羅先輩がセルティさん意外に可愛いって言うことなんてなかったから、さっきとは比べ物にならないほどびっくりしてクラッと目眩がした。

「大丈夫?」
「は、はい。ええと、丈は長めですけど後で直せば着られます。私にとって長いので、セルティさんには調度いいと思いますよ。」
「そっか。これなら臨也の奴も驚くよ。」
「そ、そうですか?」

私が言ってたこと覚えててくれたんだ。

「じゃあ、早く帰って直して、セルティと一緒にファッションショーだねぇ〜。」
「はい、楽しみですね。」

また妄想の世界に旅立った新羅先輩。前も言った気がするけど、この人末期だ。
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