school life

□第9話
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裾が汚れないように注意しながら男を押さえ込む。喧嘩には慣れてるから楽勝だね。目を白黒させている不良君の手からナイフをもぎ取り、不良君の目の前にちらつかせる。

「右と左、どっちがいいですか?」
「は、はぁ?」
「どっちもって選択肢もありますけど。」
「な、何がだよ」
「私に刺されるの、右目と左目どっちがいいですか?」

刃物を持ってるくらいだから、それぐらい覚悟してるはずだよね。私には人の目を刺す度胸なんて無いし、正当防衛といっても人の視力を奪うのは荷が重すぎる。

「おい、鈴木…?」

先輩がヒヤリと息を呑んだ。

「冗談ですって!本気にしないで下さいよ。私、グロいの無理です。」

ナイフは取り上げたまま、不良君を解放した。悪趣味だとは思われたくない。

「今日は返しますけど、刃物は持ち歩いちゃダメですよ?」
「ヒッ」

酷い。笑っただけなのに怖がられた。ナイフを返すと、何やらよくわからない言語を叫びながら不良君はどこかに走り去った。

「やり過ぎじゃねぇか?」
「そうですか?今度から気をつけますね。」

先輩からの忠告は素直に聞くべきだね。

「それにしても…俺が来た意味を感じねぇよ。鈴木ってかなり強いんだな。強いっつうか、怖ぇ。」
「大袈裟な。一つ下の後輩を怖がらないで下さいよ!」
「そ、そうだな。誰かと待ち合わせか?」

気のせいかな。今無理矢理話題を変えたよね、先輩。

「はい。もうすぐ来ると思います。」
「そうか。せっかくの祭だし、ちゃんと楽しめよ!」
「はい。ありがとうございました。」

別れ際、先輩は私の頭をポンと撫でてくれた。門田先輩って、お母さんみたい。普段からみんなに慕われてそう。
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