†小さな話†
□勿忘草
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君を置いて僕は先に逝く。
君を愛した時間
それはかけがえのないもの
だから、どうか僕を忘れないで?
君を愛した時間は、どれもが大切で
消えない思い出。
千景、君が初めて僕を本気で怒った時
『命を粗末にするなっ!!』
そう胸倉を掴んで怒っていたよね
それがどれだけ嬉しかったか
君は知らないと思う。
だけどね?
その後に流した君の涙に
『死にたくない』
と思えたんだ。
君を置いて先に逝きたくなんてない、って
心から思った。
後1日、数秒でもいい。
どうかまだ君の近くに居させて下さい。
そう神に頼んだ。
そして自分を呪った
『まだ僕は死ねない、死ねないんだよっ』
頬に伝う涙を、君は拭ってくれた。
『その命が尽きる日まで、俺は近くにいる。ずっと傍にいる。繋いだ手を離さないでいてやる…』
一度は突き放そうとした僕を君は責めなかった。
ただ、愛してると云ってくれた。
不器用で、可愛い君を失いたくない
その細い体を僕は抱き締める。
『君を抱き締めるこの腕が無くなっても、君と口付ける唇が無くなっても、僕はずっと傍に居る。君の傍に居るよ』
そう言った僕は、人知れずに泣く君の姿を知っていたから
『…また来世、次は今以上に愛し続ける』
そう君に誓ったんだ。
だから、まだ待っていて?
僕がいつか君の隣にまた笑って歩ける…その日まで…