アイリス
□一章 必然
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エリオット=ナイトレイとか言うヤツとの婚姻の話を聞かされて5日目。
今度は父が国内屈指の名門校・ラトウィッジ校へ行けと言ってきた。
『イヤ』
「ユキ〜っ」
『何で私がそんなトコに』
勝手に婚約までされて、いきなり学校に行けだなんて。人権の損害よね。
ユキは憤慨していた。
「実はだな…ラトヴィッジ校にはエリオット君がい『イヤ』
父の言葉を遮って否定の言葉を吐く。
エリオットって何?誰?
名前も顔も知らない人といきなり結婚しなさいって言われても。
家同士が親密な関係にあると言っても、それは大人だけであって、ユキとエリオットは会った事もないのだ。
…性格まで悪かったらどうしよう、私の幸せな恋愛人生計画が台無し。
そうよ、絶対性格悪いわ。だって四大公爵家の嫡子でしょ?皆にチヤホヤされて育ったのよ…
イヤ!!絶対お嫁になんて行かない!!
なんて考えをまとめて一人で頭から湯気を出していると父がこんな事を言い出した。
「そうだ、ユキおまえ、友達が欲しいって言ってただろう?」
『………。』
確かに言った。
此処カーライゼル邸は首都から離れた美しい街にあるため、住民が少ない。
父があまり、人の多い場所は好まないらしい。
友達は欲しいのだが、出逢うキッカケが無いのだ。
ユキは図星を言われて押し黙っている。それを見てユキの父は嬉しそうに勧誘の言葉を続けた。
「いいかユキ?ラトヴィッジ校はなー…国内全国から生徒が集まってくる超エリート(実際はエルリィィィ〜ットッと発音した)な学校だ」
『…だから何?』
ユキが平常を装いながら少し食い付くと、ユキの父は声を大きくして抑揚をつけながら話す。
好奇心旺盛な性格からか、ユキは父親の話に吸いこまれていった。
「だからそりゃあ人数も多くて、友達100人できるぞぉ?」
『100人っ!?』
ユキが目を輝かせて訊き返せば、父親はニッコリと笑った。
もうユキを引き付けるのは充分だ。
ごほんっ
ユキは一度大きくわざとらしい咳払いをして父親に問いかけた。
『…で、でもそんな名門校に私がいけるわけ「あるんだよユキ!」
『…な、何』
そこそこ年のいった己の父親が目をキラキラ輝かせて身を乗り出してくる様子を、複雑な心境で見つめながらユキは言う。
すると父親はユキに耳打ちをした。
「…実は手続き済ませてある!」
と。
ユキは笑った。
それはそれはにこやかに爽やかに。
その後、庭掃除をしているメイドにまで、カーライゼル侯の悲鳴が聞こえてきたのであった。