アイリス

□三章 行動
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ユキにとってラトヴィッジ校の授業は初日。

生徒達も寮を出て教室に入って来たころ。

「はい席につけー」

先生が教室に入ってきて、ぱんぱん、と手を叩けば生徒はすぐに席に座った。

彼女は担任のミス・ダリアン。
青い瞳にサラサラの金髪という、美人教師だ。

ガタガタ…と机や人が動く音がしたけど、暫くたつと聞こえなくなった。

「では今から―」

ミス・ダリアンは満足そうに笑い、今から入ってくる転校生、ユキの説明を軽く始める。

「よし、ミス・カーライゼル入って」

一通り終わらせると、先生はドアの向こうにいるユキに向かって言った。

生徒もそれにつられて、ドアをはさんでユキに視線を集まらせる。



ユキは

『むり無理ムリ…』

震えていた。

無理もないだろう。
こんなに大勢の同年代と一斉に顔を合わせるのは初めてに等しいのだから。

「ミス・カーライゼル?」

いつもは陽気で明るい彼女も、初めては、やはり緊張するのだろう。

先生の心配そうな声がドア越しに聞こえるが、ユキの緊張はとけなかった。

生徒達もまた、一向に入ってこない転校生にざわつき始めるのだった。

「あー…カーライゼル?」

ちょっと何ー?何で入ってこないのぉ?
陰気な子なんじゃない?やだあー…
え、カーライゼルってあの…?
あぁ、あそこ超有名だよなー
カーライゼルも大したことないんじゃね?
あは、かもねーっ

ざわめきの中で、他人の心が解らない生徒の声もユキの耳には、しっかりと届いていた。
そして、エリオットにも。

ユキの足がガクガクと震える。
その足で逃げ出そうとした時―…


ガンッ


教室から何か机を蹴飛ばしたような物音が聞こえた。

「…てめえら…いい加減にしろ…」
「あーあ」

その声の主はユキの許嫁、
ミスター・エリオット=ナイトレイ
その人と、彼の従者リーオだった。
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