OP 長編
□私の居場所
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雲ひとつない空の下を一隻の船は進む。
芝生の上で走り回るのは狙撃手と船医、
そしてこの船のキャプテンである。
まるで子どものように(子どもではあるが)
はしゃぐ彼らを楽しそうに微笑みながら見ているのは考古学者。
またか、と呆れ顔でしかし何処か優しい表情なのは航海士である。
その2人の隣でイスに座り、コックが作ったデザートを頬張るのは
この船の戦闘員――格闘家である。
緩く巻きがかかった長い黒髪を風になびかせながら
整った顔の少女はコックに向かってニカッと笑った。
「んまい」
その言葉、大人っぽさと幼さが混ざったような笑顔をうけ、
コックは「幸せー!!」と叫んだ。
その声のあまりの大きさに、
あぐらをかき眠っていた剣士は目を覚まし
コックと喧嘩を始めた。
喧嘩をするほど仲がいい、というがこの2人の場合、喧嘩をするほど仲が悪い。
確実に仲は悪い。
音楽家はバイオリンを奏で、船大工はまた何かを作り上げている。
いつもの光景。いつもの幸せな時間。
――彼らがつくってくれた、私の居場所。
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