OP 長編

□欲しかったもの、与えるもの
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「ユヅキ、」

あたしが名前を呼ぶと、振り返ったその顔に思わずああ、可愛いななんてこのあたしが思ってしまう。
どうしたのナミ、という返事に答える。

「あんた、どうせ行く所ないんでしょ?一緒に買い物行くわよ」

折角いい島に上陸したんだから、と付け加えるとそーだねぇ、とのんびり答えた。



ユヅキが仲間になってから随分と時間が経った。
ビビと一緒に航海している途中であたし達は絶望に染まる少女に出会った。
あたしと同い年の少女は酷く大人びていて、そしてあたし達に向けられる視線は好意とは正反対のものだった。


「近寄らないで」


人との接触を恐れている表情。


「仲間になんてなるわけないじゃない…!」


その言葉の裏に希望が隠れてたのは皆気付いていたって知ってる?
本当は仲間になりたかったんでしょう?
本当は一緒にいてくれる人が欲しかったんでしょう?




「もう誰も信じられない…!
信じられる人もいなくなったの…‼」


それなら、

「おれらがいるだろうが!仲間だ‼
信じろ、ユヅキ。おれらはお前を裏切らねぇ‼」


ほら、うちの船長も同じ事思ってるのよ。
船長だけじゃないわ、皆そう思ってる。

あんたの辛い過去も全部あたし達が受け止めるから。
だからあんたは笑いなさい。
笑った顔が1番なんだから。



「…ナミ?どうしたの行かないの?」

もう充分暗闇を味わったあんたには、


「行っくに決まってるでしょ!さ、ほらほら走った走った‼」


「あはは、何だそれちょっと待って、ナミ」




明るい太陽をあげるわ。
あんたが要らないって言うまで。


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