OP 長編

□my...A
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「お、お母様!しっかりして…!
誰か!早く来て‼」



「ユヅキ…?だーいじょうぶよ、私なら…強いんだから…ゴホッ、う…、」

「お母様…!喋らなくていいから、血が…」


病気でもいつも元気で、私の、国の太陽みたいな母親が
みるみるうちに弱っていった。
こんな時でも笑顔を絶やさないように努力している母親に胸が熱くなる。


「どうされました⁈大声を出して…っ、ハヅキ様‼」

「ソウ!どうしよう、血が、血が止まらない…‼」


入ってきたのはソウだった。
倒れているお母様を見つけると血相を変えて叫んだ。

「待っていて下さい、医師を…」
「いいわ、…ソウ。そ、こに…居なさい、」
「ですが、ハヅキ様!このままでは…!」
「いいから、う、っ…話を聞いて、ほしい、の…ユヅキも、」


このままでは危ないと判断し、医師を呼びにいこうとしたソウをハヅキは制す。

そしてユヅキに手をしっかりと握られながら話し始めた。



「よく聞いて…そして、私の言う事を、しっかり…守るの、よ…

っ、ゴホ…この国は、あと数時間で、滅びる…王、が、裏組織と、手を…組んで…金目当て…に、裏組織の…目的、は…この国、…滅ぼすこと…この国の、地下、に……うっ、ゴホッ、ゴホッ、く、あ…、」


「お母様!」
「ハヅキ様…!」

もう、駄目だと思った。
どうしてこんな事になったんだろうか、

「泣かないで…、ユヅキ、強く、なりなさい…ま、もれるように…、」

「お母様、お母様…!」

涙が止まらなかった。
どんどん握りしめている手が冷たくなっていくのが怖かった。

「ソ、ウ…最後まで迷惑、かけちゃうわ……この子のこと、よろしくお願いね…、」

「っ、ハヅキ様、」


「城の裏側、の海に…ボートを、用意してある…それで、逃げるの…とにかく、…逃げて……生きて、…」

「いや、…!お母様は?一緒に行くでしょ⁈
だから…!死なないで!お願いだから…‼」


「ユヅキ、貴女には…妹が、いるの…父親が違う…貴女は、私の愛した人の子……ごめんね、黙ってて…探してあげて、ナツキ、よ…ユヅキ、…っ、愛してる……」

私が握りしめていたお母様の手の力が完全に抜けた。

「‼お母様…⁈お母様!お、かあさま…!!」

「っ…く…、」


ドーン‼‼

「⁈なに、」

突然大きな音が響き、割られた窓ガラスから外を見た私とソウは息を飲んだ。



…国が、燃えていた。
次々と燃え上がる炎、国民らしき人影は一つもなかった。


「なんてことを…王!」
「ソウ!どうしよう、皆が‼」


もう遅かった。
地面に爆弾が埋め込まれていたらしくこの様子では国民の大半が死んでいるだろう。
国の半分以上が炎の海である。

「いつの間に…こんな事に、
…ソウ、」


「…行きましょう、ユヅキ様。」

「そんな!皆は⁈王族が国民を見捨てる事なんて許されない!」

「もう既に!なす術はありません‼ご覧になればわかるでしょう⁈なぜ国民たちの姿が見当たらないかは分かりませんが、もうきっと…」


もう、分からなかった。
亡くなった母親、裏切った父親、
告げられた真実、あった事もない妹の存在、
燃えていく大好きな国、国民。

…涙が、止まらない。


「ソウ…、」

「ならば貴女は、ハヅキ様との約束を守るべきではありませんか…?」











「お母様…ごめんなさい。
連れていけません、守れなくてごめんね、…ごめんね…」


「…行きましょう」

「……うん、」



その時、1番印象に残っているのは柔らかい表情のお母様の顔だった。







あれからお母様の用意してくれたボートに乗りソウと
城の近くで生き延びていた幼馴染のキラと一緒に、国の近くの無人島へ逃げ込んだ。全てを見ていたキラから紡がれた言葉たちに私たちは何も言えなかった。
この国の王は城下町に毒ガスを振りまきほぼ全ての国民を殺したのだ。キラは城にいる私の所へ向かっている途中だったらしく、毒ガスからは免れた。
しかし無人島へ到着した途端、父の金欲しさの感情につけ込み利用した裏組織の追っ手により、襲われた私達。
勿論狙いは私だった。それが分かっていたソウは私をボートに乗り込ませ逃がした。
自分1人だけ逃げるのは嫌だと抵抗したが無駄だった。
私はソウとキラを残し、ある国へたどり着いた。

罪悪感、不安感、もう生きてく意味が無い、そこまで思った。
何回も死のうとした。
でもそんな私の命を繋ぎとめたのはお母様の言葉だった。



…生きて……
探してあげて、ナツキ、よ…




15の時、海に出た。
私を生きることと繋ぎとめているのは、「妹を探すこと」「本当の父親を見つけること」「真実を知ること」
そして、…「母親、ソウとキラの復讐」。

こんな所にいても、この4つは果たす事が出来ない。
だから海に出た。





汚れた感情を抱き、私は戦った。
あのとき愛するものを守れなかったのは、私が弱かったから。
すぐに私の首に賞金がかかった。
1人だった。
寂しくない、といったら嘘になるが母親やソウ達の苦しさを考えたらなんて事なかった。



過去に囚われすぎていたと思う。
分かっていたが前を向いて歩くのは無理だった。
だって、皆好きだったから。
皆、大好きな人たちだったから…








「おーいユヅキ!こっち来い!」

麦わら帽子を被った少年が、ユヅキを呼んだ。


あたしの闇を取り除いてくれた恩人である。

きっとルフィが居なかったらあたしはあのまま、汚い感情を纏い生きていただろう。


もう一度、誰かと一緒にいることの幸せを教えてくれた。
もう一度、誰かを信じることの素晴らしさを教えてくれた。
復讐なんてやめろと本気で怒ってくれた。
あの頃の、あたしに戻るきっかけを作ってくれた。
感謝しきれないよ、ルフィ。

いつも笑っていたあの頃に、

(過去を受け入れて前へ)


 

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