OP 短編

□暑さに溺れる
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「あーつーいー…」

モビーディック号の上、夏島に近づいているからだろう、かなり暑い。
もう、溶けてなくなりそうな勢いで暑い。
いや、むしろもう溶け始めている。流れてってるよ私の体。

「あー…」

ジャンケンで負けたためやる事になってしまった洗濯という大仕事を終え(人数が尋常ではないためかなり大変かつ時間がかかる)、何もやる事が無くなってしまった私は自室に戻ろうとしたが、いかんせん冷房機というものがない為、部屋がサウナ状態だった。
そんな中でゆったりまったり出来るはずがなく、私は自室にはわずか数秒滞在しただけで、仕方なしにモビーディック号のありとあらゆる日陰を探しに出たのだった。

そこで見つけた絶好の日陰ポイント。
太陽の位置が変われば場所も移動しなければならなそうだが、取り敢えずは良さげである。


「だー……暑い…」


柵に寄りかかれるように座りこみ、一つ息をはいた。
太陽の光が直接当たらなくなったからか、肌が焼けるようなしんどさはなくなった。

「お、ユヅキ」

やっと涼しくなったと思ったときに暑苦しい男が目の前に現れた。

「…エース」

私よりも後に入ってきた同い年の青年は今や私よりも上の立場である隊長になってしまった。
そんな隊長様が相変わらず上半身裸で笑っている。


「日陰探そうと思ってさ、歩き回ってたらユヅキみっけた。」

何にも聞いてないのに、そういうのに敏感な彼は多分私が言いたい事を理解したのだろう。
嬉しそうに笑いながらそう言った。
今の私にはその眩しい笑顔は反則だ。


なんだ、不覚にも今ドキッとしてしまったじゃないか。


私の隣に座ったエースは、聞いてもいないのに今日あった事をペラペラと話している。

…距離が近い。
ただでさえ暑いのに、メラメラの実を食べたエースがこの至近距離にいると更に暑い。


「…なァ、ユヅキ」


ひたすら喋るエースの話は大半右から左に流れていたが、
私の肩にエースの手が触れたので私は意識を隣の男に向けた。

「な、」

に、という言葉はエースの唇に飲み込まれてしまった。


…近い。
近い近い近い。
今まで隣にあった顔が目の前にある。
相変わらずそばかすの散る顔は彼の年齢よりも若く感じさせる。
…じゃなくて、…長い。

普段の彼の行動からは想像もつかないくらい、触れている唇は柔らかくて優しい。


「ちょっと、」

やっと離れた唇から言葉を発するが、その声は自分でも驚くほど掠れていた。
非難するように彼を睨むが、エースは笑っただけだった。

「なんかお前見てたらキスしたくなった。」







この暑さは夏島が近いからだ…と、信じたい。

 

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