OP 短編

□アイ will ラヴ ユーA
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「あ、おはようユヅキちゃん」
「おはよーユヅキ!」
「おはようユヅキさん」

教室内に入るとクラスメイトから次々に声をかけられ、その一つ一つに挨拶を返す。


「ユヅキおはよ!」

「おはよ、ナミ」

オレンジ色のロングヘアの悩殺ボイン姉ちゃん。多分ナミのことを説明するならこんな言葉が似合うだろう。
今日も制服のボタンがはちきれそうだ。よく止まってるよ、このボタン。

「あれ、ビビは?」

いつもの定位置に親友が居ない事に気付きもう一人の親友に尋ねた。

「風邪ひいたって。メールきてない?」

「え、…あぁ、きてたわ。今見た」

「最近寒いしねー!あたし達も気をつけなきゃ」

「確かに寒いわな、ねぇ、帰り何か買ってこうよビビに」


わたしの提案にいいわね!と答えたナミと、なにを買っていくかあーでもないこーでもないと騒いでるうちに授業の始まりをつげるチャイムが響く。






「ねぇユヅキちゃん、ここなんだけどさ…」

授業終了後、隣の男子がさっきまでの授業で分からなかった事を聞いてきた。

てか、ユヅキちゃんとか呼ばれる覚えないんだけど…名前なんだっけこの人。
気持ち悪いなァ…

顔や言葉には絶対出さないが、内心毒を吐きまくりながら丁寧に教えていると、頭上から何かが降ってきた。いや、正しくいうと覆いかぶさってきた。

視界に入ってくる腕は女物の制服ではなく、それとは逆の性別のもので。
そうなると、こいつしか居ないこんな事するのは。

「なァ、ユヅキ腹減った」

「…エース」

やっぱり。しかも、わざわざ離れた教室からいきなり来たと思ったら開口一番に腹減った、だって。

なんなのコイツ。いや、今に始まったことじゃないけど。

「なーなー腹減ったんだって。何か食うもんねェの?」

「そこのバックに飴あるから口にでも入れとけ、…まさかあんた、それだけの為にここまで来たんじゃないでしょうね」

言っておくがわたしとエースの教室はかなり離れている。
一番端と端だ。
なのにコイツはなにかある事にわたしの教室まで来てちょっかい出してくのだ。
ちなみにエースはモテる。そりゃあもう、かなり。
だからね、分かるでしょーよ、幼馴染のわたしが受ける風当たりの強さ。
関係ないじゃんただの幼馴染だし。てかコイツが勝手にわたしの周りをうろちょろしてるだけで、わたしからエースにどうこうしてるとか無いし。女って面倒くさいよなァ…「エースくんに付きまとわないでよ!」イヤイヤあなた、付きまとってんのエースだから。「ホントは迷惑って思ってるのよエースくんは!」こっちの台詞だよなーそれ。
ホントにどれだけ面倒な事言われてきたか。
そんな事も露知らず、目の前の男子(ごめんまだ名前思い出せない)が、なかなか気まずそうな顔をしてるのにも関わらず、エースは「古典の教科書貸してくれ!」と、エースのファンがこの前命名していた、天然悩殺スマイルとやらを見せた。

…なんだかな、この笑顔見ちゃうと今までのイライラがどうでも良くなってくるんだよなァ…



「サンキューな、ユヅキ!」

「あーはいはい。早く戻んな遅れるよ」


狭い教室でデカイ声出しながら(しかも人の教室で。迷惑だ)、エースは去って行った。






「何だかんだ言ってユヅキってエースに甘いよねぇ…」

「は、甘くないよ別に」

頬杖をつきながらボソッとナミが呟く。


「ていうかあんた意外と鈍感よね、」

その言葉の意味がわたしには分からなかった。

「どゆこと、」

わたしが鈍感って。人の気持ちとかには敏感なつもりなんだけど。と続けると、ナミはまあ、そうだけど。と言ったあとに、何か発見した時のように目を丸くして、

「ああ、そっか、近すぎて分からない事もあるわよねぇ。」

という言葉とともにうんうん、とうなづいていた。

…なになに、全く分からないんだけど、

「まぁ、あれだけあからさまに態度に出してても気づかれてないとは…不憫ね、エース」


「…はァ……?」


なに、何でエースが不憫なわけ。


 

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