OP 短編

□アイ will ラヴ ユーB
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がちゃり、ノックも無しに女子高校生の部屋に入ってくる家族以外の人物といったらユヅキの周りには2人しかいない。


「おーうユヅキ、…て、寝てんのか」


向かい側に住む幼馴染同士、互いにノックをせずに相手の部屋に入っていくのが当たり前になっている。
時には着替えてるなんて事もあるが、ユヅキはまったく気にする事なく続ける。
その行動がエースを男として見ていない、という感情の表れであるような気がして、エースは少なからずショックを受ける。


「おれだって男なんだぞ…襲っちまったらどうすんだ…」

そんなこと、できるはずないのに。
そんな勇気、ないくせに。
この気持ちを伝えることすら出来ないのに、どうやって身体まで奪おうと言うのか。

はァ、とため息をつきながらスヤスヤと眠るユヅキの側へ腰を下ろす。
普段は素っ気ないし色気もへったくれもないような女だが、こうやって目を閉じ無防備な寝顔を見せられると、胸がぎゅう、と締め付けられて理性を保つのに必死になる。

元々、整った顔立ちで、学校では美人だと言われているのも聞いたことがあるし、コイツを狙ってる男が沢山いるのもエースは知ってる。
ただユヅキは人の事には敏感なくせに自分の事に関しては鈍感なのだ。
きっと自分が不特定多数の男から好意を寄せられているなんて知りもしないだろう。

だからエースは牽制をかけているのだ。ユヅキはおれのもんだ、手を出すな、と。毎日毎日ユヅキの教室に行ったりして。

「こんだけアピールしてりゃあ、ふつー気付くだろうが…」

ユヅキの短くてふわふわした髪の毛を手で弄びながら呟く。
こういう行為も、なんの関係もない男と女だったらきっと甘い意味を持つのだろうが、エースとユヅキには無い。
すべて「幼馴染だから」で片付けられてしまうのだ。
エースにとってはそれがネックである。

「ん…、」

ユヅキから小さく声が漏れ、慌ててエースは手を離す。

ユヅキが起きない事に安堵のため息をつくと、エースは手を伸ばし、ユヅキの頬をそっと撫でた。

おれだけを見て欲しい。
幼馴染とか、そういう対象ではなく、一人の男として。

触れる掌からこの願いが伝わるように、エースはもう一度ユヅキの頬を撫でると瞼に軽くキスを落とし、部屋を出ていった。



 

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