鋼の錬金術師

□心の距離*envy
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"ぷにっ"


今日何度目かわからない効果音をたてて僕、エンヴィーは隣で本を読んだ体勢のまま寝ているチビ…エドのほっぺをつついた。


僕がここに来てから約30分、エドはずっとこの調子で僕の事を完全に無視して寝ていた。


疲れているのはわかる。
それが僕を信頼してくれている証しだとも分かっている。


だからこれまで頬をつつくだけで我慢してきたが、さすがにそろそろ飽きてきた。


"ぷにっ"


もう一度エドの頬をつつくがやはりエドは起きる気配がなくて、しばらく沈黙が続く。


「起きないと襲っちゃうよー」


半分本気で言ってみるが、エドは眉ひとつ動かない。


「ったく、せっかく仕事の合間をぬってきてあげたのに。」


僕はそうぼやきながらもう一度エドの頬をつつく。と、"トン"と軽い音を立てて、エドの頭が僕の肩に乗ってきた。


「完全に熟睡ですか…」


肩に乗ったエドの頭を見下ろす。
きれいにまとまり、三つ編みにされている金髪、意外に長いまつげ、通った鼻筋、白くて滑らかな首筋。


「僕を誘ってるの?」


こんな無防備な姿で、こんなシチュエーションで、何もするなと言う方が無理だ。


でも残念。
もうすぐラストと仕事の打ち合わせの時間だ。


僕は肩に乗ったエドの頭をそっと持ち上げる。


「それじゃあまたね、エド♪いい夢を。」


エドが頷いたように見えたのはきっと気のせいだろう。


僕は足音を忍ばせて部屋を出る。


部屋を出ると、さっきまでエドの頭が乗っていた肩が涼しく感じた。


少しだけ立ち止まって目を閉じるとさっきのエドの寝顔がまぶたの裏に浮かんで、心臓のあたりが暖かくなって。


あぁ、心ってこのあたりにあるのかなって。


僕にも心があるのかなって。


そう思えてますますエドが愛しくなって。


僕はゆっくり目を開けてまた歩き出した。








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