片恋。

□告白。
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 でも、



「なぁヒナ、男ってどうなんだろ」

「「「…はぁ?」」」



 ことの始まりは柳のこの一言。

 いきなりの突拍子もない発言に昼時の和やかな空気が教室もろとも一気に凍りつく。
 聞かれた当の本人、日向は目を見開いて危うく食べていたパンを落としそうになった。



「…なに言ってんだ柳。お前熱でもあるのか?」

「あー、アレだ。さっき渡された期末テストがあまりにも悲惨だったから現実逃避に走ってんだろ?」



 みんな口々に冗談で笑い飛ばしていたが、そのなかで日向は発言内容が他人事ように笑えずただ口を結んだ。



「んー…唐突に思った」

「え、なに。お前の思考回路、謎なんですけど。ついにバグった?」

「ほら、いきなり過激な事聞くからヒナが黙りこんじゃったよ」

「あっいや、ゴメン。ヒナ、そういう意味じゃなくってさ」



 そういう意味って、どういう意味なんだよ。
 そう切り返そうと口を開きかけたがそれを押さえる。
 ここで変なことを口走って私情を出してしまったら元もこもない。
 だからわざとらしく大きくため息をついた。



「柳がいってるのは同性愛をどう思うかっての事なんでしょ?」

「……まぁ、端的に言ったら?」



 自分が言い出したくせに直球に切り返すと少し言いにくそうにしている。それに少しイラついた。



「わっ、ヒナちゃん真面目に考えてたのかよ!」

「こんなん真面目に答える必要ないって!」



 真面目に考える必要がない?
 そうだな、普通はそうなんだろうな。
 でも自分はその考える必要もないことできっと一生苦しめられていくんだよ。

 周りがからかうのを受け流し、感情を押さえ込みながらできるだけの平然を装って答える。



「…別に、本人たちが良いならそれでいいんじゃない?」

「まぁ、そうなんだろうけど、」

「それに俺達がどうこう言っていいことじゃないと思う。偏見はやめた方がいい」



 つい語尾が強い口調になってしまった事に自分でもハッとしたが、もう後の祭りだ。

 一瞬周りが静まり返る。
 先程まで冗談を言い合っていた友人も皆黙ってしまっている。

 微妙な空気に居たたまれなくなり"ごめん"と言い残して日向は教室から出ていこうと立ち上がる。



「……日向…」



 呆けたような柳の声を聞いてギュッと唇を噛み締めたまま教室を後にした。

 今は、柳の声を聞きたくない。
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