帝人受け
□特別な場所
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「今日は災難な一日だよ」
「そうですか」
二人でコーヒーを飲む。
やっと良い雰囲気になろうとした時に、臨也がゴホゴホとむせた。
「ちょ……あ、甘っ!!」
帝人が冷ややかに笑う。
「み、帝人君!? な、何したのさ!!」
「いえ別に、ただ単にブラックとブレンドを交換して貰って、お砂糖たっぷり加えて、ミルクをたくさん入れただけですよ」
「色々とやってるじゃんか」
(いや……見た目で気づけよ)
とは言えずに、心の内にしまい込む帝人だった。
「それでは、もう帰りますね」
「もう帰るの? 早いなー」
「僕に用事はないんでしょう?」
「たまには好きな人とコーヒーでも飲みたいじゃないか」
「………」
その夜
ー田中太郎さんが入室されましたー
[セットン]ばんわー
【田中太郎】ばんわー…ってセットンさんだけですか
[セットン]そうですね、甘楽さん見かけませんね
[セットン]お仕事忙しいんでしょうか
【田中太郎】大変ですよね
ー甘楽さんが入室されましたー
《甘楽》皆さんのアイドル、甘楽ちゃんの登場ー☆
[セットン]あ
【田中太郎】わ
《甘楽》どうしちゃったんですかー?
《甘楽》微妙な反応しちゃって
【田中太郎】いや、噂をすれば何とかって…
[セットン]今、田中太郎さんと甘楽さんの噂をしていたんですよーw
《甘楽》キャッ、何何? 何ですか?
《甘楽》皆で乙女の噂話ですかー?
【田中太郎】そうです。どうしてウザイんだろうって…
[セットン]真剣に悩んでいたところですw
《甘楽》ヒドイー、甘楽傷ついちゃうー
[セットン]う
【田中太郎】わー
《甘楽》二人とも息ぴったりすぎですよ!!
《甘楽》嫉妬で怒っちゃいますよ!ぷんぷん!
〜内緒モード〜
甘楽≫どうして怒ってるの?
田中太郎≫怒ってませんよ
甘楽≫じゃあ、嫉妬?
甘楽≫それだと嬉しいな
田中太郎≫嫉妬?誰にですか?
甘楽≫シズちゃん
田中太郎≫なんで静雄さんが出てくるんです?
甘楽≫シズちゃんと俺が一緒にいた事が気に入らない?
甘楽≫学生時代に何があったのか分からないのが嫌?
甘楽≫返事が無いね。図星?
田中太郎≫大嫌いです、臨也さん
《甘楽》太郎さんったらひどいこと言うんですよ!
【田中太郎】甘楽さんが悪いんです!!
【セットン】仲良しさんですねー
【田中太郎】そうですかー?
〜内緒モード〜
甘楽≫シズちゃんも新羅もドタチンも、君のお友達も
甘楽≫知らなくて、入れない場所
甘楽≫二人だけの特別な、
《甘楽》盛り上がったところ失礼ですが、
《甘楽》用事あるんで、もう落ちまーす☆
[セットン]残念ですね
〜内緒モード〜
甘楽≫俺は帝人君のこと大好きだよ
田中太郎≫………
田中太郎≫臨也さん
甘楽≫愛してる
田中太郎≫僕も、です
ー甘楽さんが退室されましたー
[セットン]さよならー
[セットン]って、ありゃりゃ
[セットン]挨拶がないなんて珍しいですね
【田中太郎】あの、僕もおちます
[セットン]へ?
[セットン]太郎さんも?
[セットン]じゃあ、私も…
ー田中太郎さんが退室されましたー
ーセットンさんが退室されましたー
ー現在、チャットルームには誰もいませんー
ー現在、チャットルームには誰もいませんー
静かにパソコンの電源を切った。
起動終了の音が部屋に響く。
机の上に伏せた。
(僕って本当にバカだな…)
確かにそこには現実には見えないけれども、出会える場所。出会った場所。
臨也さんと僕と、二人だけの特別な場所が、誰にも入る事が出来ない場所が。
そこにあるーー。
-END-