帝人受け

□〜の壁崩壊
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答えには行き着かない。
頭の中でグルグルと渦巻いている。
ひたすらひたすら同じ場所を行ったり来たり。

ぺキッ


シャーペンの芯が折れたところで思考が停止した。
考えるのはもうよそう。
悶々と悩む事は性に合わないな。

手を動かしている先輩をチラリと見た。
その隣に紀田正臣がいる光景が思い浮かんだ。
とたんに、さっきまで渦巻いていたものが消えた。
代わりに頭の奥から『答え』がどんどん溢れ出てくる。
難しい問題が解けた時の感覚。でも高揚感はない。

そうだ…僕は……。

いつも先輩は紀田正臣と一緒にいた。隣にいた。
この街に引き込んだのも紀田正臣だ。
俺は何が言いたい?

「先輩!」

「うん?」

「顔は上げないでください! 今、先輩の顔見ると答えが出そうにないんです」


紀田先輩がいなくなって代わりに俺が隣にいるようになった。
ずっと隣にいるのに満たされない。


「先輩……」


「うん」


「先輩!」


ただ隣にいるだけで、紀田先輩のように存在感がない。
この差はいったい何なんだ?
何かで遮られている。


「先輩……」


「うん」


「先輩……


そうだ……俺は『壁』が嫌だったんだ。
後輩と先輩で隔たりがあるのを。
創始者とかブルースクエアでの関係だとか。
一方で、紀田先輩とは壁がない。
いや紀田先輩も黄巾族の将軍だ。
幼馴染だからか?


竜ヶ峰先輩」


「うん」


「帝人先輩……


俺らが利用されるか、するかの関係だから?
もしも修復できるのなら、そんな関係は嫌だ。
『壁』のない関係―――
帝人先輩と紀田先輩のような関係が良かった……。


帝人……!」


「うん」


「「えっ?」」


「いえ違うんです! これは! 間違ったというか…思わずというかっ……。
 故意じゃないですよっ! 先輩を呼び捨てにするなんて!」

どうしよう……。
恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
まともに先輩の方を向けない。
思ってたことが口から出るなんて、俺の馬鹿野郎っ!!
先輩、怒ってるかな……?
口を閉じ、覚悟を決めて先輩を見ようとした。


「ありがと、青葉……」


えっ?
ちょ、今……。


(それにしても、青葉君……。
自分の気持ちごと声に出して言ってたの、気づいてたのかなぁ?)


-END-
(呼び捨てにしてしまったのはきっと『恋』だよ)

呼び捨てにするっていいもんですね^^
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