帝人受け

□3ッ目の選択肢
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「キュートなのと〜」
「セクシーなの〜」
「「どっちが好きなの〜!?」」

青葉は後輩の可愛らしさ、臨也は大人の色気を、それぞれ出している。
しかし、二人は膝まづいて手を差しのべていた。
そのベクトルは困り果てた顔で二人の目の前にいる帝人。
放課後の校門前では何ともシュールな光景だ。
何故このような状態になったのかと言うと―――。


学級委員会が終わり、下靴に履き替え学校を出た。
が、いつの日かとデジャブのように二人が校門の脇から出てきたのだ。

「「帝人君、先輩!!」」
「「え?」」
「えーっと……。二人ともどうしたんですか?」

「違うんですよ帝人先輩! 俺がここで先輩のこと待ってたら、こいつが来てっ……」
「青葉君がここにいるのは納得するんだけど、何で臨也さんまでいるんですか?」

青葉は何故か一緒に帰ろうと言ってないはずなのに、毎日いる。
それは納得がつく。
しかし、○年前に卒業した臨也はもうこの学校には用がない。

「俺が最初に帝人君と帰る約束してんだからね」
「あの、僕の話聞いてました?」
「僕が先ですよ。先輩と一緒に帰れるのは後輩の特権ですから」
「勝手に話を進めないでくれる?」

互いに睨み、火花をバチバチ飛ばして合っている。
帝人はポツンと立たされて勝手な論争を聞いていた。
次々と下校する生徒達が関わらないようにそそくさと三人の横通って行く。
女生徒は臨也と帝人を交互に見て小声で話ながら通りすぎた。
帝人は居心地が悪そうに隅っこに寄った。

「君みたいなチンチクリンと俺の、俺の帝人君が帰るわけないじゃんか」
「チンチクリンって……!!
 しかも『俺の』って二回言う必要あるんですか。所有者を主張するなんて哀れですね。
 帝人先輩は、俺の彼女だってこと自覚してますから」

「ハッ、押し付け? 笑わせてくれるねぇ。
 自分の妄想を押し付けるなんて相手に悪いよ?? 尊重してあげないと」
「出待ちまでしてるstkと一緒にするんじゃねぇよ」

「俺は理想だからいいの。妄想と理想は違うんだよ?」
「じゃあ理想のままで終われよ、ウザヤ先輩??」

「それは無理な相談だねぇ。だって『臨帝』人気だし?
 ってか、ウザヤ先輩って何? 敬語なく少し調子乗りすぎじゃないか、黒沼青葉君?」
「これからは『青帝』の時代ですよ」

「後輩相手に帝人君は惹かれるわけないじゃん。時代は大人の魅力溢れる俺だってばー」
「時代はギャップ萌えですよ。知らないんですか? 情報屋の癖に。
 stkのギャップなんて気持ち悪さにもっと磨きがかかりますね。
 自動喧嘩人形とでも仲良くやっとけ。その間に帝人先輩といちゃつきますから」

「はぁ!? 俺がシズちゃんと!? キモい!!
 その言葉訂正してくれるかなー!?」
「あれ公式じゃなかったんですか? 静臨って。
 嗚呼、平和島にもstkしてるとか? 臨静でもですか? 報われないですねー。
 確か老若男女問わず節操ないんですよね? 汚れた奴はさっさと消え失せろ」

「俺、欲求不満で飢えてないから。帝人君onlyだから。
 脅威はないぞって顔してるけど、正臣君や杏里ちゃんだっているんだよ?」
「紀田先輩は臆病なんで告白すら出来ないでしょう。杏里先輩は……策は早めに打っとくべきでしょうけど。
 脅威はあんた、折原臨也ですよ」

「へー自分をstkと同等に扱うんだね」
「自覚してたのか、キモッ」

「紀田君や杏里ちゃんや新羅とセルティ、シズちゃんならどうにかなんだけど……。
 俺の脅威も君、黒沼青葉だ」
「俺と同じとかキモッ」
「さっきからキモいばっか言い過ぎじゃない!?」


((こう言い争っているうちはまだいい。
 いずれどんな手を使ってでも奪ってくるはず……))

「論争終わりました? なら、もう帰りませんか?」

二人の論争にひとまず終止符が打たれた。
門は閉められていて、夕立の静けさが流れた。


一羽のカラスがその静寂を破った。
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