帝人受け

□服は心を隠す
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文化祭っていうご都合主義な展開だけどクラスの女子が帝人に女装させたんだ。
見事にメイド服に着られている帝人の姿を見て、何も言わない俺ではない。
まぁ、周りのやつが可愛い可愛いって言っているのが不満だけどな。


他の奴には恥ずかしがりながらも普段通りに接してるのに、俺だけに怒り気味。

何でだ? 俺何か変なこと言ったか?
帝人に見捨てられるようなこと言ったか?
やばい。そう考えてたら目の前が霞んできやがった。

俺帝人に捨てられたら……。

メイドの格好が似合いすぎている杏里は気が付いたのか慰めてくれた。
帝人も心配そうに駆け寄ってきた。

いつものように心配してくれる帝人の顔を見たらホッとした。
けれども、同時に帝人に心配させた自分に腹が立った。
奥に押し込んでお調子者の俺を引き出した。


なにもねーよ。心配ナッシーング!
ほらその格好にもそんな顔は似合わねーよ、帝人。


折角心配したのに……。
やっぱり正臣は……。


俯いた帝人の言葉は聞こえなかった。
いや、聞かせようとしなかったのか。


帝人は教室の扉を開け放ち、出て行ってしまった。
取り残されたのは俺と杏里だけ。
立ちすくむ俺を叱責する杏里。
今すぐ走って追いかけなさい、と言われるがままに廊下を走った。



服が邪魔していつも以上によたよたと走っている帝人を後ろから抱きしめた。
温かい。帝人の匂いがする。
抵抗されたが離さない。
この手を離したくはない。

優しく名前を呼んで伺ってみると、帝人は泣いていた。
俺はぎくりとした。


どうしたんだよ。


もう一回問いかけた。

涙を拭いながら、ぽつりぽつりと言葉を紡いだ。


正臣言ったよね?
似合ってる可愛い、って。
女装が似合ってるってことは、やっぱり女の子が好きで……。
僕なんていつか捨てられんじゃないかって……。


つまりは、俺が好きなのは『帝人』じゃなくて『女装した帝人』って言いたいんだな。
まったくそんなことで悩んでたのか……俺の恋人は。


大丈夫、俺は帝人を捨てたりはしない。
どんな姿であっても帝人は帝人だ。
そんな帝人を愛し続けるからさ。

それならもう女装なんてするな。
あー……でも、恥じらいある帝人の女装姿見たいな。
やっぱ他の誰にも見せたくねぇや。
今の泣いてる姿も怒ってる姿も。
ずっと制服の姿でいろよ。
無茶じゃねぇよ。

悪かったな。
帝人も俺の事捨てるんじゃねぇぞ。
さっきの顔?
捨てられた子犬みたいな顔ってどんな顔だよ!?


今みたいにずっとずっと笑ってくれよな―――。


-END-
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