帝人受け

□猫耳と臨也
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「臨也さん」

カポッという擬音が似合う感じに何かを被せられた臨也。

「ちょ、なにこれ」

臨也は自分の頭を触ってみた。
すると、三角形のふわふわしたものが二つ。

「何って猫耳ですけど。ああ、やっぱり服と似合ってる」

猫耳を被せた当の本人は平然とその猫耳姿を吟味している。
冷静すぎるその反応に困惑する臨也。
確かに帝人の言う通り、黒色の猫耳は、臨也の服装とマッチしている。
黒を基調とした服装はほどよく筋肉がついた体のラインを強調している。
まるで黒猫のようだった。

「似合うって……」
「あ、取っちゃ駄目ですよぉ」

猫耳を外そうとした臨也に甘えるような声で制す帝人。

「今の帝人君、超可愛かったんだけど。そうじゃなくて、これ取りたいの。恥ずかしいから」

帝人の可愛さに萌えながらも、訴える。
取っていいか、の問いかけに首を横に振る帝人。
その攻防戦は暫く続いた。


「取ったら駄目って言ってるでしょ?」
「ああもう! 取らなきゃいいんでしょ!?」
「はい」

しまいにはボールペンを取り出し文句を垂れる猫を黙らせた。
そして従順になった臨也に満足そうに微笑んだ。

帝人は臨也の後ろから手を回し、自分よりも大きい黒猫を抱きかかえるように抱きしめた。
臨也は帝人に自動的にもたれかかる体勢になった。
大きな背中に頬をこすりつけ無意識に臨也の匂いに鼻をくすぐらせる。
そんな帝人の直に感じる体温と可愛さを味わっていると、後ろから帝人が言った。

「いざにゃんですね」
「へ?」
「何かそんな気がします。にゃんにゃんみたいな……」

予想外な言葉を発する帝人につい笑ってしまった。

「ネーミングセンスはおいといて、帝人君が『にゃんにゃん』って言うと可愛いね」

後ろに目をやって言った瞬間、帝人は爛々と目を輝かさせた。
帝人の何かのスイッチを押してしまったようだ。
臨也は後悔した。が、遅かった。

「じゃあ臨也さんも『にゃんにゃん』って言ってください」
「にゃんにゃん?」
「はい。にゃんにゃんです」

期待に膨らませる帝人から逃れらることができなかった。
何が何でも言わせる気だと悟った臨也は仕方なく口にするのだった。
まあ、可愛い帝人君のためだ、と自分に言い聞かせながら。

「にゃんにゃん」

早く終われと思い、ふて腐れた口調で言った。

「もっと可愛く言ってください。それ取りませんよ」

即答だった。
しかも条件つきで返された。
数回するも同様に即答で却下された。
だんだん臨也はやけくそになり始めた。

「にゃんにゃん!」

語尾にハートマークがつきそうなぐらいの口調で言った。

「………」

返事がない。

「帝人くん?」

聞こえるのは小さな寝息だけ。
けれども臨也にまきついた細い腕は離れない。

「寝てるし!! 言った損じゃん。……ま、いっか」

背中にちいさな飼い主さんのぬくもりを感じて、臨也もまた心地よい眠りに入った。


-END-
(帝人君が本当に寝てたのかは不明…)

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