帝人受け

□アイス
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俺はあくまで無神論者だ。
あの世はあるとしても、神はいないと考える。
だが今日に限ってその神に助けを求めたい。
無病息災の神限定でね!
なぜなら、破壊神魔王のごとく……。
神?魔王?結局どっち、なんて考える余裕もない。
とにかく今年最大の怒りをぶちまけるアイツから逃げる!
あの子との待ち合わせに大遅刻だ!
今回ばかりはシズちゃんのせいだからね。


「つまりは僕との待ち合わせに遅れた理由は、偶然出会ってしまった静雄さんに正直に
 今日は僕と会う約束があることを言ったら、静雄さんは臨也さんが僕のことストーカーしてるって勘違いして、
 追いかけられる破目になった日頃の行いが悪い臨也さんのせいですね」
「まったくもってその通りです」

ベンチに座っている彼の前で正座をさせられている俺。
昼間の公園の風景としては何ともシュールすぎる。

「こっちはずっと待ってたんですよ」
「本当にゴメン、帝人君」

でもずっと待っててくれたんだ。

「静雄さんも何で勘違いしたんでしょうかねぇ」

不思議そうに言う帝人君。
それは、シズちゃんも帝人君に好意を寄せているから。
そんなことにも気づかず、彼にもヘラヘラしてるから勘違いされるんだよ。シズちゃん単細胞だから。

「はぁ、仕方がないですね。ここで文句を言っても埒明かないし……。
 そうですねぇ……。かわりに罰を与えてあげましょう」

ボールペンでめった刺し!?
在り得ない……いや帝人君なら在り得る話だ。
このまま踏まれる?
それはそれで嬉しい。
一種のプレイだよねぇ。

何てこと考えてる間に帝人君が俺の前でしゃがんだ。
そして、自分の人差し指を唇にあてて悪戯っぽく言った。

「新しくオープンしたアイス屋の人気のアイス、奢って下さいね」
「ははは、帝人君もミーハーだね」

内心残念だったのは言うまでもない。


いつの間にか立ち上がって先を行く彼が空を見上げ呟いた。

「ああ、でも無事にデートに来てくれて良かったです」

小さな背中に大きな意地っ張りを背負っている。
それが、もう可愛すぎて可愛くて嬉しかった。
耳まで真っ赤にしてさ、もう何なの可愛い。

「いつまで座っているんですか?」

はいはい、ワガママなお姫様。
早く行きたいんでしょ?


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